巨人移籍に本音「心が折れそうでした」 若林楽人の不安…“転校生”に声をかけた2人

広島戦に出場した巨人・若林楽人【写真:小林靖】
広島戦に出場した巨人・若林楽人【写真:小林靖】

前日は9回一打同点のチャンスに代打で空振り三振「心が折れそうでした」

■巨人 3ー2 広島(30日・東京ドーム)

 交換トレードで西武から巨人に加入した若林楽人外野手が6月30日、東京ドームで行われた広島戦に「6番・左翼」で移籍後初スタメン。初回に適時打を放つなど、4打数2安打1打点と活躍し、3-2での勝利に貢献した。シーズン途中の移籍に大きな不安を抱える“転校生”は、ひとまず胸をなでおろした。

「心が折れそうでした」。偽らざる心境をそう明かす。松原聖弥外野手と1対1の交換トレードが成立したのが6月25日。28、29日の広島戦に代打で1打席ずつ起用されたが、いずれも凡退。特に29日には、1点ビハインドで迎えた9回2死一、二塁の一打同点のチャンスで送り出されるも、栗林に空振り三振に倒れた。

 ナイーブなところもあり、シーズン途中の移籍で新しいチームになじむことは、必ずしも簡単ではない。特に金髪、ロン毛の選手も多く、ワイルドなムードの西武と、“紳士たれ”を標榜する巨人とでは、雰囲気が大きく異なる。若林自身、あご髭を剃り、髪を短く刈り込み、大きくイメチェンして臨んでいる。

「自分がお客さんのような感じでベンチにいるのは、よくないと思います。しかし、プロ野球の世界なので、結果を出してこそ周囲に認めてもらえると思っています」と言うだけに、なおさら好機で結果を出せなかったことは、精神的にこたえた。

 それでも「吉川(尚輝内野手)さんや岡本(和真内野手)さんに声をかけていただいたお陰で、励まされました」と述懐する。そして一夜明けたこの日、移籍後初のスタメンに抜擢されたのである。

交換相手の松原聖弥も西武の1番打者として奮闘中「同じ気持ちだと思う」

 巨人は初回、岡本和の中前適時打で先制した後、なおも1死一、三塁で若林に打順が回った。相手先発の左腕・玉村昇悟投手の印象は、当然薄い。「映像やデータだけではわからない部分もあるので、自分と似た感覚の打者にイメージを聞いて臨みました」と明かす。

 さらに普段よりバットを指1本分短く持って打席に入り、カウント2-2から内角低めのスライダーを一振り。打球は左前で弾んで追加点が入り、一塁ベース上で拳を振り下ろすようなガッツポーズを見せた。そしてチームメートの求めで、“移籍後初安打・初打点”の記念のボールは、一塁側ベンチに届けられた。

 4回先頭の第2打席でも、玉村から中堅フェンス直撃の三塁打。阿部慎之助監督は“新顔”の若林を「動物的なところがあって、ポテンシャルが素晴らしい。どんどんチャンスをあげたいなと思います」と高く評価した。

 交換相手の松原も、西武で出場した全4試合に「1番・右翼」スタメンで起用され奮闘している(6月30日現在)。若林は「たぶん、僕と同じ気持ちでライオンズに行っていると思う。いろいろな気持ちを抱えていると思うので……話してみたいなと思います」と、年齢では4歳上の松原の心境を思いやった。そして「ライオンズも好きなチームなので、もちろん今も結果を見ています」と付け加えた。

「当たり前のことですが、セ・リーグは投手のところで代打が出るケースが多いですし、チーム打撃がありますし、バントも多いなと感じています」と、まだまだ戸惑いが先に立つ。結果を出すことで自分の居場所を切り開こうと必死だ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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