宮城大弥は「無理していないです」 復帰登板で“超えた”球数…見せたエースの自覚
オリックス・宮城大弥が見せた“エースの意地”
故障明けの「球数制限」を覆す続投容認した。中嶋聡監督の“超法規的措置”にオリックス・宮城大弥投手が応えた。
「無理はしていないです。大丈夫だったので。とりあえず(5回も)勝負をしたかったんです」。宮城はいつも通り静かな口調で、6月27日のソフトバンク戦(京セラドーム)での続投の舞台裏を振り返った。
肌寒い秋田でナイター開催された5月8日の楽天戦で左大胸筋を痛め、50日ぶりの1軍マウンド。復帰に向けてのテスト登板は6月18日のウエスタン・リーグ、中日戦の1試合(先発で3回36球、2安打1奪三振無失点)のみ。2軍戦で段階を踏んで復帰を図るプランもあったが、低迷するチーム事情や宮城の希望もあり、早期の1軍復帰となったようだ。
「強気に攻めることを目標にしている」という宮城の言葉通り、初回に先頭の佐藤直樹外野手を3球三振に仕留めるなど3人で片付け、その裏の3点リードを守り5回、85球2安打6奪三振1四球無失点でマウンドを譲り、今季3勝目を挙げた。
当初、首脳陣の協議で決まった球数は「60球」だった。宮城のコンディションや試合展開によって前後に変動するとはいえ、「85球」は想定を大幅に超えた。宮城が目指すローテーション投手として最低限5回まで試合を作るという責任を果たすためには、1イニングの平均球数は12球。初回と3回こそ三者凡退に仕留めたが、4回を終えるのに「70球」を費やしてしまった。
「その時は、交代するのか、続投するのかどっちかなというのがありました。ここは多分、話し合いが来るんだろうな」と4回のマウンドを降りる際の心境を振り返った宮城。毎回、厚澤和幸投手コーチと左肩などの具合を確認しながらのマウンドだったが、状態が悪くないことは中嶋監督にも伝わっていた。
エースとしての自覚を感じさせた「85球」
「監督さんから『どうや』というか『90球まで』と」。互いに多くの言葉はいらなかった。「3回、4回……。4回かなと思っていた。どうしても行きたい、投げたいという顔をしていたので……」と試合後に中嶋監督は明かした。同時に「(85球は)行っちゃいけないくらいの球数。本当はやっちゃいけないのかなと思いました」と、プラス「20球」の思いについて、選手を守る立場と選手の熱意に応えたいという苦しい心のはざまでの決断だったことを吐露した。
指揮官の苦悩を知らない宮城は、5回を打者3人、15球で抑え、コンディション不良のないままマウンドを降りた。リミッター解除の「90球」を下回る投球数「85球」。「90球を超えたら、どんな場面であっても交代させていました」と、ベンチで宮城の投球を、固唾をのんで見守っていた厚澤和幸投手コーチら首脳陣を決断を救う投球でもあった。
興南高時代以来の故障だという。「すべての怪我は防げると思っています。今回も僕の準備不足。防げる部分はあったと思います」という宮城だけに、キャッチボールもできない期間は苦しく、自分を責めた。復帰後の状態は良好だ。「投げる試合は全部勝っていって、チームに貢献したい」。エースとしての自覚を感じさせた「85球」だった。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)