「行方不明で申し訳なかった」 指揮官も喜び…ダルビッシュ合流がパドレスにもたらす効果

取材に応じたパドレス・ダルビッシュ有【写真:佐藤直子】
取材に応じたパドレス・ダルビッシュ有【写真:佐藤直子】

2か月のブランクを感じさせないブルペン投球「状態は今、すごくいい」

 パドレスのダルビッシュ有投手が23日(日本時間24日)、約2か月ぶりに本拠地ペトコパークに姿を現した。6月1日(同2日)に左脚付け根の張りで負傷者リスト(IL)入りした後、復帰に向けて調整を重ねていたが、7月6日(同7日)に「家族に関わる個人的な事情」(マイク・シルト監督)により制限リストに移行。チームから離れた後の動向はほとんど伝わることがなかった。

 久しぶりに戻ってきたクラブハウスでは、チームメートや球団スタッフらの温かい歓迎が待っていた。元阪神のロベルト・スアレス投手は右腕の姿を見つけると満面の笑みを浮かべて握手。レンジャーズ時代の盟友で不在の間にトレード移籍してきた左腕マーティン・ペレス投手は「やっと友達に会えた。これでジョークを言い合える」と少年のように笑う。試合前恒例の囲み会見に臨んだシルト監督は「仲間としても戦力としても称賛され、成功を収めてきたダルビッシュが戻ってきたことはポジティブでしかない」と喜びを語った。

 不在の理由について、ダルビッシュは「僕から話せることはないです」と明らかにしなかった。だが、ファンへのメッセージを求められると「2か月間、行方不明で本当に申し訳なかったんですけど」と冗談めかしながらも、「この間、僕もクリアにできたこともいっぱいあるし、学んだこともたくさんあるので、また新しい自分としてやっていければいいと思います」と清々しい表情。さらに「今は野球に集中できる状況です」と歯切れ良く話した。

 その様子とは裏腹に、今季中の復帰は「1週間前はその可能性はなかったと思います」と明かす。「本当にこの2、3日で(状況が)変わったので」という急展開で迎えた合流だった。だがこの日、普段と変わらぬルーティンでブルペンでの投球練習に臨む姿からは、2か月のブランクは微塵も感じられず。本人は「昨日までいたかのように帰ってきました」と笑うが、個人的な事情に対応する中で空き時間を利用し、「状態は今、すごくいい」と言えるまでに調整してきた点は、さすが、の一言だ。

シルト監督「準備が整い次第、ローテーションに戻るだろう」

 この2か月でチームは白星を重ね、ドジャース、ダイヤモンドバックスと熱い地区優勝争いを演じている。130試合終了時点でワイルドカード争いでは2位につけ、ポストシーズン出場は射程内。ベテラン右腕は「僕がいなくなってメチャクチャ勝っているので『やっぱり俺、いらないじゃん』って思った」と自虐的に笑う一方、シルト監督は「彼の準備が整い次第、ローテーションに戻るだろう」と期待を寄せる。復帰までの詳しいスケジュールはこれから話し合う予定だが、指揮官は「(復帰すれば)チームにインパクトを与えるはずだ。それもポジティブなインパクトをね」と目を細めた。

 右肘の炎症から復帰したジョー・マスグローブ投手はこの日、7回1安打無失点の快投を披露。前日には右大腿骨のストレス反応でIL入りしているフェルナンド・タティスJr.外野手がダッシュや遠投を始め、復帰に向けて前進した。そこに舞い込んできたダルビッシュ合流の朗報。シーズン最終盤を迎えるにあたり、2006年以来18年ぶりの地区優勝を狙うチームに追い風が吹き始めている。

「僕に今できることは、自分の仕事にしっかり集中すること。それが(球団)フロントの方が求めていることだと思います」

 3チームが一歩も譲らぬ優勝争いを勝ち抜くには、各々の選手が浮き足立つことなく、自分のやるべき仕事を全うすることが大切だ。「自分の仕事にしっかり集中する」ベテラン右腕の姿は、今のパドレスにとって格好の手本となりそうだ。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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