マウンドに「2人も…」 “復活”の山下舜平大が仲間に感謝、胸に刺さった「大丈夫だぜ」

オリックス・山下舜平大【写真:北野正樹】
オリックス・山下舜平大【写真:北野正樹】

オリックス・山下舜平大、宗からの「お前、打たれねえぞ」に感謝

 チームメートの温かさを、改めて知った。オリックスの山下舜平大投手が、8月18日の日本ハム戦(京セラドーム)で挙げた379日ぶりの白星を支えてくれた先輩たちに感謝の思いを口にした。

「『2人も来てくれたんだ』と驚きましたね。声を掛けてもらうのは(自分にとって)いい状況ではないんですが、そういうように気を遣っていただくのはうれしかったですね」

 初回の立ち上がり、1番の淺間大基外野手、続く五十幡亮汰外野手へカウントを追い込んでから外角低めへ157キロ、156キロのストレートをズバリと決め、いずれも4球で連続見逃し三振に仕留めた。「低めに伸びるストレートがエグ過ぎて(二塁手の)西野さん(真弘内野手)と思わず、目が合いましたよ」と三塁を守る宗佑磨内野手が驚くほどの投球だった。

 ところが、3番の郡司裕也捕手、4番・清宮幸太郎内野手に連続四球を与え2死一、二塁。フランミル・レイエス外野手にも2球連続してボールとなったところで、宗と紅林弘太郎内野手がマウンドに駆け寄ってきた。
 
 マウンドの投手に内野手2人が同時に掛け寄り声を掛けるという珍しい場面。宗は「同時に(遊撃から)紅林がマウンドに行くのが見えたんですが、僕も行きました。1勝もしていませんでしたが、チームにとって投げなければいけない投手。勝たないといけない投手ですから」と振り返る。

 マウンドの山下は「宗さんはニヤニヤ笑いながら『(このボールなら)お前、打たれねえぞ』という感じで、紅林さんも『大丈夫だぜ』みたいな。本来はそんな場面がない方がいいのですが、宗さんはよく声を掛けてくださいます。ピンチになると、宗さんの方を見てしまいます」と感謝を忘れない。

仲間に支えられ「次はチームが苦しい時に誰かを助けられるようになりたい」

 宗と紅林の声掛けで一呼吸をついた山下は、レイエスへの3球目、外角低めの直球で二ゴロに仕留め、ピンチを断つことができた。日本ハム打者のバットを振らずボールを見極める“待球作戦”にも大きく動揺することなく、5回を88球2安打1失点。9奪三振の快投で2023年8月5日の西武戦(ベルーナドーム)以来の勝利を挙げた。

「勝てないままにシーズンを終えるのとは、大きな違いがあります」としみじみと語った山下は、「苦しい時こそ支えてくれた人たちがいたので、今度は(自分が)そういう人になりたい」と続けた。投球のリズムや感覚を取り戻してもらおうという思いで、首脳陣が一時的に配置転換したブルペンでは、アンドレス・マチャド投手やルイス・ペルドモ投手が投球フォームなどをチェックして「ナイスボール」と声を掛けて励ましてくれた。

「気にかけてくれているというか、前向きなことばかり言ってくださった。外国人投手には、メンタル的に落ち込んでいる人を1人にしないというような、文化があるんでしょうね。彼らはすごい経験をしてきていると思うので、そういう人の気持ちがわかるんじゃないでしょうか」

 森友哉捕手も支えてくれた1人だ。「根気強くやるしかない。絶対にいいピッチングができるようになるよ。めげずに頑張ろう」と悩みを共有し、前を向かせてくれた。「去年、2桁勝利を目前に怪我をしてしまって、今年は勝負という中で、なかなか思うような投球ができず、苦労をいっぱいしてきました。その悩みが報われた1勝なのではないでしょうか」と、リードした森も自分のことのように喜んだ。

「チームの方たちに助けられた1勝なので、次はチームが苦しい時に誰かを助けられるようになりたい」。人間的な成長が、投球の幅も広げてくれるはずだ。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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