侍戦士の中に1人だけ“違うユニ” まさかの大会棄権に粋な提案…日本代表が繋いだ絆
U-18日本代表の練習に、大会を棄権したパキスタン代表の選手が参加した
日本代表からの粋な提案だった。台湾で開催されている「第13回 BFA U18アジア選手権」に出場している侍ジャパンU-18日本代表は5日、全体練習を行った。オープニングラウンドを全勝で勝ち抜き、6日に行われるスーパーラウンド・台湾戦に向けた練習に、1人だけ異なるユニホームの選手が混じっていた。
思い切り汗を流した。日本代表の練習に参加したのは、パキスタン代表のジャン・ハスネン選手。パキスタン代表は初戦までにメンバーがそろわず大会を棄権していた。初の代表選出だったが、試合をすることすら叶わなかった。
両親ともにパキスタン人で、父の仕事の関係で幼い頃から日本で暮らしてきた。現在は青森県立三沢高校の野球部に所属していることもあり、日本代表からの計らいで練習参加が実現。ジャン選手も「参加させてもらって嬉しい気持ちです」と感謝を口にした。
三沢高のユニホームで約1時間半、練習に励んだ。身長170センチ、体重103キロの体格を生かし、投げては最速133キロ、打っては高校通算16本塁打を誇る。この日は投手陣とともに、ランニングメニューや投球練習をこなし、打撃練習にも参加。小倉全由監督から直接打撃指導を受けると、木製バットでレフトスタンドへ柵越え弾も放った。これには日本代表の選手たちも「えぐい!」と驚愕の様子で、グラウンドにいる全員から拍手が送られた。小倉監督も「いいスイングしている。バットの出も癖がないし、楽しみな選手ですね」と絶賛した。
日本代表選手と笑顔で会話する姿が印象的だった。練習後には主将の間木歩投手(3年)から日本代表の帽子が、ジャン選手からはパキスタン代表のTシャツが贈られ、がっちりと握手を交わした。
表情は晴れやか。もちろん棄権への悔しさはある。「最初は残念という気持ちでした。悔しい思いはありましたが、その代わりに今日、試合以上の大事な経験ができました。(台湾に)来たことへの後悔は全くありません」。今の環境に感謝して、前を向いた言葉には力強さがある。
憧れはドジャース・大谷翔平投手。大学でも野球を続け、将来の夢はプロ野球選手と志は高い。国籍は異なっても、野球を愛する気持ちは同じだ。
(木村竜也 / Tatsuya Kimura)