宮城大弥が贈る“はなむけの言葉” ボロボロの体…19年走り切ったT-岡田を「見習いたい」

オリックス・宮城大弥【写真:真柴健】
オリックス・宮城大弥【写真:真柴健】

オリックス・宮城大弥が引退のT-岡田に贈る言葉

 終わらないと思っていたストーリーにも、いつしかピリオドが来る。オリックス・宮城大弥投手が、今季限りでの現役引退を表明したT-岡田外野手へ、ゆっくりと言葉を選んで贈った。

「まだ、気持ちが追いつかないですよ。より親しくしてもらっていたからこそ……。寂しいです。なんていう言葉にすればいいのかが、正直わかりません。本当にチームの顔ですし、居てくれるだけで頼りになる先輩ですから……。『ゆっくり休んでください』としか言葉がないです」

 19年間の現役生活。2001年生まれの宮城が5歳だった頃、T-岡田は「岡田貴弘」として球団合併2年目のオリックスで“産声”をあげていた。2005年高校生ドラフト1巡目。高校通算55本塁打の実績から“なにわのゴジラ”の愛称で親しまれていた。

「ゴジ」は「T」になり、今や「Tさん」になった。18歳でプロの扉を開き、36歳になった先輩に、宮城は“初心”を届けたい思いが募っている。「最後まで、野球を楽しんでほしいです。この1か月、プロとしてユニホームを着る最後の生活だと思いますし、楽しかった野球を心から思い出してほしいなと思います」。目を細めずに、はっきりと言い切った。

 T-岡田は、外野手登録ながら主な“職場”は一塁手でもあった。サウスポーの宮城は、投球モーションに入るタイミングでT-岡田の表情が目に入る。「いやぁ、もう……。安心感しかないですよ。Tさんが打球を捕れなかったら、もう仕方ないです。そう思わせてもらえる先輩でした。(打席に向かっても)どうにかしてくれそうだなと思って、ベンチから見させてもらってました」。肩に担いだバットをすうっと立てる「背番号55」を、まだまだ見たかった。

T-岡田は「誰よりも声援をもらっている選手だと思っています」

 真剣な眼差しで話した宮城が、表情を緩めた瞬間がある。T-岡田は遠征からの移動ゲーム開催日、いつも始発に乗って帰阪。用具担当が球場に到着するよりも前から早出練習を行うほど、練習の虫だった。「すごいお手本というか……。『野球バカだな』って、ずっと思わせてもらってました」。愛のある冗談で先輩をいじると、ようやくニッコリした。

 18歳で出会った頃は「デケェ怖い先輩」だった。「話をしていくうちに、Tさんの優しさに触れるようになりました」。今では食事に行く機会も増えた。心置きなく本音も話せる先輩だった。「悲しいんで。悲しいまま終わりたくないです。楽しい関係でいたいです」。だからこそ、残された時間を大切にする。

「自分もいずれというか……。長い年数の現役生活を送りたいといつも言ってきていますので(Tさんを)目標にしたいです。体のケアだったり、体調の面だったり……。チームの中でも誰よりも気にしていたのを知っています。僕も見習いたいなと思っています」

 声援のパワーは、T-岡田の存在から教わった。「Tさんの応援歌が聞けなくなるのは寂しすぎます。正直に……。他の誰よりも声援をもらっている選手だと思っています。あの応援の一体感が僕もすごく好きだったので、寂しいですよね」。スタンドでタオルをぶん回すファンを、ボロボロになっても走り切った先輩を、ぼやけることなく目に焼き付ける。京セラドームに、轟砲は鳴り続ける。

○真柴健(ましば・けん)1994年8月、大阪府生まれ。京都産業大学卒業後の2017年に日刊スポーツ新聞社へ入社。3年間の阪神担当を経て、2020年からオリックス担当。オリックス勝利の瞬間に「おりほーツイート」するのが、ちまたで話題に。担当3年間で最下位、リーグ優勝、悲願の日本一を見届け、新聞記者を卒業。2023年からFull-Count編集部へ。

(真柴健 / Ken Mashiba)

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