現役引退は「フェイクニュースだと…」 中川圭太が受けた衝撃、小田裕也への感謝
オリックス・中川圭太、小田裕也の引退は「フェイクニュースだと思いました」
信じられない……。信じたくない気持ちが、そこにはあった。オリックス・中川圭太内野手は、小田裕也外野手が今季限りで現役引退するというニュースを「ニセ情報」だと受け止めた。
「フェイクニュースだと思いましたね。Tさんに安達さん、比嘉さんと続いて、今度は小田さん。朝に知って『嘘やろ?』とか『そんなわけないよな』と思ったんですが、本当だとわかって……。もうちょっと、一緒にやりたかったです」。今でも信じられないというような驚いた表情で、中川が小田の引退を受け止めた。
東洋大、日本生命から2014年ドラフト8位でオリックスに入団した小田に対し、中川は東洋大から2018年ドラフト7位で入団。中川にとって小田は、大学の先輩であると同時に「追い付けない存在です。人間的にもプレーヤーとしても。後輩の選手たちに対する気配りというか、ほんとによくしてくださいます。プレーヤーとしては試合に入るまでの準備ですね。一番緊迫した場面で、普通に100%のプレーができるということを、常にやっていらっしゃいます」と、リスペクトの対象でしかなかった。
小田は熊本県出身。シャイで不器用と形容される「九州男児」だからなのか、自ら話しかけるタイプではない。「でも、僕らから聞くとやっぱりすごい知識を持っていらっしゃいます。すごく勉強になることを教えて下さるんです。守備のことで聞くとなったら、裕也さんにずっと聞いていました」。凄みがわかるからこそ、尊敬してやまない。
「1歩目のスタートの切り方や、どちらの足でタイミングを取るのか、中堅と左翼の1歩目のスタートの違いなどを教えてもらいました。それを練習で試してみると『なるほど』と思うことばかりで、本当に勉強になりました。野球の知識だけでなく、勝負勘も凄いんです。尊敬しています」
「裕也さんがいなければ、リーグ3連覇もできなかったと思います」
引退発表後もファームで練習を続けている小田の姿に、中川は「バッティング練習を見ていても、めっちゃ(調子が)いいんです。まだまだ、できますよ」と目を見張る。中川が改めて思うのは、小田のプロとしての生き様だ。試合を左右する難しい場面での代打や代走、守備固めでの起用が多かったほか、2軍で打撃の調子がよくてもチーム事情で1軍昇格が見送られることもあった。
「全てにおいて変わらない人だなと思います。こちらから見てメンタル的に葛藤があるだろうなと思う時でも、それを表に出されないんです」
喜怒哀楽を172センチ、75キロの体に包み込み、ひたむきに白球へと向かう姿は、後輩選手たちにとって模範であり、目指すべきものだった。「裕也さんがいなければ、リーグ3連覇もできなかったと思います」。いぶし銀のプレーでチームを支えたとともに、若手選手らの技術とプロ意識を高めた功績を、中川は最大級の言葉でたたえた。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)