活躍しても「名前が載らない」 注目の記者投票…苦い経験した“先輩”が願う新人王
オリックス・阿部翔太が願う古田島の新人王獲得
同じ轍を踏ませたくない。オリックスの阿部翔太投手が、ドラフト6位・古田島成龍投手の「新人王」獲得を心から願っている。「同じ社会人出身ですし、中継ぎの仕事も評価してもらえるでしょうから獲ってほしいですね」。シーズン終盤にファームで調整を続けている頃、阿部は日焼けした顔をほころばせてタイトル獲得に期待を込めた。
古田島は取手松陽高、中央学院大を経て日本通運からオリックスに入団。プロ初登板となった4月6日のロッテ戦(ZOZOマリン)から救援で22試合連続無失点のプロ野球タイ記録をマーク。最終的に50試合登板を果たし、2勝1敗。防御率0.79で24ホールドを挙げ、新人王候補に躍り出た。
一方で、阿部は酒田南高、成美大を経て日本生命から2020年ドラフト6位でオリックスに入団。プロの扉を開いたのは28歳の頃だった。プロ1年目は肩痛などで4試合登板だったが、プロ2年目は44試合に登板し1勝0敗3セーブ。22ホールドを挙げ、防御率0.61でリーグ連覇、日本一に貢献した。
新人王の最年長受賞は1950年の大島信雄(松竹ロビンズ)の29歳となっている。オールドルーキーの阿部が獲れば最年長だったが、記者投票で西武・水上由伸投手が選ばれた。「僕の場合、2年目でしたし、1年目の古田島の成績は立派です。それに、テレビの『主な新人王候補』の中に自分の名前が載らないほど知名度は低かったので……」と阿部は振り返る。
古田島は成績もさることながら、登場曲「水戸黄門」の主題歌や打者を抑えた際に喜びを全身で爆発させるパフォーマンスが「古田島優勝」とファンの間で話題になるなど、話題性も十分ある。
新人王候補には、10勝(6敗)を挙げている西武・武内夏暉投手(国学院大、2023年1位)や7勝(6敗)の日本ハム・金村尚真投手(富士大、2022年2位)らライバルも多い。古田島は謙虚な姿勢を貫き「そういうのは全然考えていないですね。先発の方が候補だと思うので。0(点)で帰ってくるのが中継ぎの仕事。1年目からこんな経験をさせてもらっているのは、すごくいい財産になると思います」と笑顔を輝かせる。“先輩”阿部の願いが実を結ぶのか――。決戦投票に注目が集まる。
(北野正樹 / Masaki Kitano)