“打高守低”よりも好まれる選手…元スカウトが明かした傾向「ガラリと変わる可能性も」

関大・金丸夢斗、東海大相模・藤田琉生、早大・山縣秀(左から)【写真:真柴健、加治屋友輝】
関大・金丸夢斗、東海大相模・藤田琉生、早大・山縣秀(左から)【写真:真柴健、加治屋友輝】

投手は昨年62.5%(72人中45人)→55.1%(69人中38人)

 24日に行われた「プロ野球ドラフト会議 supported byリポビタンD」で、支配下で指名された69人中、投手は38人(55.1%)。昨年の72人中45人(62.5%)に比べると少なかった。1位指名に限っても、昨年は12団中9球団が投手だったが、今年は6球団にとどまった。現役時代に中日、巨人、西武で強打の捕手として活躍し、阪神で9年間スカウトを務めた経験も持つ野球評論家・中尾孝義氏が分析する。

「今年は比較的、投手が“不作”だったのかなという印象です」と中尾氏。「本来、投手はチームに何人いてもいい。多く獲っておきたいのが本音です。プロのスカウトにとって、投手は投げる球を見ればだいたい判断できますが、打者は相手投手のレベルによって大きく変わってしまうので、評価が難しいという面もあります」と説明する。

 比較的少なかった投手の中には、日本ハムが2位で指名した身長198センチの東海大相模高・藤田琉生投手のように、“メジャーサイズ”の期待株がいる一方、阪神1位のNTT西日本・伊原陵人投手は170センチ、中日2位の吉田聖弥投手は176センチ、楽天2位の環太平洋大・徳山一翔投手は177センチで、いずれも決して大柄とは言えない左腕。今年のドラフトの“目玉”の1人で中日が1位指名した関大の左腕・金丸夢斗投手も、身長は177センチだ。

 中尾氏は“スカウト目線”で「左投手の場合は希少価値が高いですし、ストレートに角度がつかないとしても、右打者の内角に食い込むスライダー系のボールと、外角に逃げる球(チェンジアップ、シュートなど)があれば、十分通用します」と解説する。

日本ハム5位指名の早大・山縣は元プロの監督が太鼓判を押す守備の名手

 日本ハムが5位で指名した早大・山縣秀内野手は、超入学難関校の早大学院高出身であることでも話題の遊撃手だが、東京六大学秋季リーグでの打率.257(35打数9安打=25日現在)が示すように、打撃が課題。その代わり、“元プロ”の早大・小宮山悟監督がドラフト前から「彼は守備で飯を食っていく覚悟ができている。守備だけで獲ってくれる球団があるなら……」と語っていた通り、遊撃守備はグラブさばき、守備範囲、強肩のどれを取っても一級品である。

「仮に、守備が下手な強打者と、守備はいいけれど打撃が弱い選手がいるとすれば、後者の方が指名されやすいと言えると思います」と中尾氏。「守備のうまい選手は、プロに入ってもうまい。プロの打球の速さにも慣れます。しかし、アマチュアのレベルで強打者であっても、プロの投手に対応できない選手も存在します」と説明した。

 さらに「指導者との出会いなど1つのきっかけで、ガラリと変わる可能性があるのが打撃です。NPB通算2000安打以上をマークした宮本慎也氏(元ヤクルト内野手)にしても、古田敦也氏(元ヤクルト捕手)にしても、社会人時代の打撃の評価は低く、守備でプロ入りした選手でした」と例を挙げる。

 スカウトのお眼鏡にかない、プロとしての“第一関門”を突破した選手たちは今後、どんな成長を見せてくれるだろうか。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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