愛情を受けた日々に「想像ができない未来」 紅林弘太郎…“恩人”の緊急辞任は「悲しかった」

オリックス・紅林弘太郎(左)と中嶋聡前監督【写真:北野正樹】
オリックス・紅林弘太郎(左)と中嶋聡前監督【写真:北野正樹】

オリックス・紅林弘太郎「これまで教えて頂いたことを生かしていきたいです」

 恩義を忘れず、大きく羽ばたく。オリックスの紅林弘太郎内野手が、プロ6年目は“脱中嶋チルドレン”の意識で臨む。「正直に言って(中嶋聡前監督は)なんで僕を使ってくれるんだろうと思うことは何度もありました。今となっては本当にありがたいことです。でも、いつまでも(中嶋前監督に)頼ってはいられません」。秋季練習で汗と土にまみれた紅林が、いつになく表情を引き締めた。

 紅林は静岡・駿河総合高から2019年ドラフト2位でオリックスに入団し、高卒2年目の時に10代として球団初の2桁本塁打を放った。肩の強さと正確なスローイングも高く評価され、9日から開催される「2024 ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12」のメンバーにも選出された。

 飛躍のきっかけは、入団1年目の2020年8月下旬まで2軍監督だった中嶋前監督の大抜擢だった。監督代行を務めた2020年も最終盤で起用された。2021年、中嶋前監督が正式に監督へ就任すると太田椋内野手とともに開幕スタメンに起用されるなど、代行監督就任時に2軍から引き上げられた杉本裕太郎外野手らとともに、“中嶋チルドレン”と呼ばれてきた。

 打撃不振でファーム行きを命じられ「地獄の日々」を過ごしたこともある。ベースカバーの遅れを厳しく指摘され、大阪・舞洲の球団施設での打ち込みを続ける「鍛錬の夏」も経験したが、全てはチームの中心打者として育てようとする中嶋前監督の期待の表れだったと理解している。紅林は「僕はがむしゃらにやってきただけなのですが、中嶋さんには僕には想像ができない(僕の)未来が見えていたのでしょうか」と素質を見抜き、チャンスを与えてくれたことに感謝する。

 その指揮官が、今季最終戦を終え辞意を表明し勇退することになった。「本当に悲しかったですね。これまで教えて頂いたことを生かしていきたいです」。中嶋前監督の指導や助言で築いた基礎をベースにして、さらに技術を高めて精神的にも強くなる機会と捉え、前を向く。

「安達(了一)さんやTさん(T-岡田)もいらっしゃらなくなります。4年間くらい、1軍でずっと出させてもらっているので、これからは本当の意味でチームを引っ張っていかなければいけないと思っています」。同期入団の宮城大弥投手とともに、投打の先頭に立ってV奪還を目指す。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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