故障、戦力外も…宜保翔が前を向けた言葉 同郷の比嘉幹貴に感謝…「救われました」
オリックス・宜保翔を“救った”比嘉幹貴の言葉
豊富な経験に裏打ちされた言葉が、弱気になる心を奮い立たせた。肩痛で長期離脱していたオリックス・宜保翔内野手が、今季限りでの現役引退となった比嘉幹貴投手の助言で前を向いている。
「比嘉さんの言葉を聞くと……。なんか、ちょっと自信がつくんです。また頑張ろう。俺、できそうだな……って。いつもありがたい存在でした」。球団から比嘉の現役引退が発表されて数日後、宜保は郷里のレジェンドに改めて感謝の思いを口にした。
宜保は沖縄県豊見城市出身。2018年ドラフト5位でオリックスに入団した。比嘉と初めて会ったのは、入団が決まった後のことだった。父親の友人で中学時代に比嘉の先輩だった人が紹介してくれたという。「頑張ってね。何かあったら言ってね」という優しい言葉に、プロ生活への不安がなくなった。入団後も、先輩の選手にいじられていると「いじめるなよ。悪いことを教えるなよ」と笑いながら、声をかけてくれた。
最も感謝していることがある。今季、膝痛で2軍での調整が長かった比嘉と一緒にリハビリ期間を過ごし、様々なアドバイスをもらったことだ。
宜保はプロ6年目の今季、開幕1軍は逃したが、5月3日に1軍昇格を果たすと、月末までに出場した13試合で7打数3安打の打率.429。5月31日の中日との交流戦では、9回先頭打者として左前打で出塁し、1死一、三塁から宗佑磨内野手の左飛で本塁にヘッドスライディング。サヨナラのホームインを果たし、チームの連勝に貢献した。
「沖縄のおじいちゃんやおばあちゃんのように話しかけてくださるんです」
しかし、肩痛で6月12日に出場選手登録を抹消され、7月26日のウエスタン・リーグ中日戦(杉本商事BS舞洲)で試合に復帰したものの肩の回復が遅れ、代打と代走のみの出場にとどまった。
「肩の故障は初めてだったので、リハビリの方法もわからないので、投げ方や調整の仕方を教えていただきました。なかでも、メンタル面が大きかったですね」
思うように回復しない肩の状態。「やばいです。全然、上がってこないんです」と状態を説明する宜保に、比嘉は「大丈夫。あなたなら、大丈夫だよ」と優しく声をかけてくれた。
「僕は落ち込むタイプではないのですが、ボールを投げることができない期間が長くなると……やっぱり。そんな時に『焦っても仕方がないからね』とか『焦っても意味ないからね』と。沖縄のおじいちゃんやおばあちゃんのように話しかけてくださるんです。結構、救われましたね、僕は」
宜保は10月3日に、球団から来季の支配下選手契約を結ばないと通告された。育成契約での打診を受け、7日から始まった「みやざきフェニックス・リーグ」に参加。まだ本格的な送球ができないため、DHで打席に立ち復帰への道を歩んでいる。肩の状態がよくなれば、再び支配下登録選手に戻る可能性はある。1日も早く1軍のグラウンドで活躍することが、比嘉への恩返しになる。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)