韓国の”トリプルスリー男”を連続三振斬り 専門家が分析…中日22歳が圧倒したワケ

韓国戦に先発した侍ジャパン・高橋宏斗【写真:小林靖】
韓国戦に先発した侍ジャパン・高橋宏斗【写真:小林靖】

トリプルスリーの21歳キム・ドヨンを4打数無安打2三振

 野球日本代表「侍ジャパン」は15日、「ラグザス presents 第3回 WBSC プレミア12」のオープニングラウンド、グループB・韓国戦に6-3で逆転勝ち。国際大会での韓国戦は、2017年のアジアプロ野球チャンピオンシップ以降、9連勝となった。“韓国の大谷翔平”と称される21歳のホープ、キム・ドヨン内野手を4打数無安打2三振に封じたことが勝因の1つだった。

 10月に21歳となったばかりのキム・ドヨンは韓国プロ野球で今季、打率.347、38本塁打、40盗塁でトリプルスリーを達成。今大会も14日に行われた初戦のキューバ戦で、2回にソフトバンクのリバン・モイネロ投手から満塁弾、7回にもソロを放ち、乗りに乗っていた。先発の中日・高橋宏斗投手も、1歳下のキム・ドヨンを最も警戒していたはずだ。

 初回、いきなり1死二塁のピンチでキム・ドヨンを迎える。21歳の右打者に対し、高橋は初球から7球連続変化球(スプリット6球、ナックルカーブ1球)。そしてカウント3-2からの8球目に、初めて投じた外角の156キロストレートで空振り三振に仕留めた。

 3回先頭での第2打席は初球に、他の打者を含め、この日初めて投じたカットボールで見逃しストライクを取った。2球目のナックルカーブと3球目の155キロのストレートが高めに外れた後、4、5球目に内角スプリットを振らせ、2打席連続三振に切って取った。

 現役時代に捕手としてヤクルト、日本ハムなど4球団で21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「キム・ドヨンは第1打席の極端な変化球攻めでは、『いつストレートが来るのか』と迷いが生じたでしょうし、結局最後にストレートで仕留められたため、第2打席でもストレートのイメージが脳裏に焼き付いていて、悔しさも残っていたと思います。だからこそ2打席目にカットボールでストライクを取れましたし、スプリットで三振を取れたのだと思います」と配球の妙を指摘した。

普段は直球が半分以上…この日は29.5%でスプリットが53.8%

 高橋は普段、ストレートの割合が半分を超える投手。しかし、この日は伝統的に速い球に強い韓国を相手に、スプリットが78球中42球(53.8%)を占め、ストレートは23球(29.5%)だった。「どうしても勝ちたい試合だっただけに慎重になり、ストレートは投げづらかったのだと思います。緩急の“緩”に偏り、苦しい投球になりましたが、それでも4回7安打2失点に収めた高橋の力量は大したものです」と野口氏はねぎらった。

 一方、キム・ドヨンは5回の第3打席では、2番手の西武・隅田知一郎投手のフォークに遊ゴロ。7回の第4打席では隅田のチェンジアップをとらえ痛烈な飛球を放ったが、中飛に終わった。野口氏は「さすがに振りが鋭い。第4打席は真芯でとらえたからこそドライブがかかってしまいましたが、うまくバックスピンがかかっていれば本塁打になっていたかもしれない。紙一重だったと思います」と指摘した。

 侍ジャパンはかつて“宿命のライバル”として何度も苦汁をなめた韓国に、これで国際大会9連勝。しかし、野口氏は「韓国はキム・ドヨンをはじめ非常に若い選手が台頭していますし、2026年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に照準を合わせているそうですから、これまでの長期低迷はすでに底を打ったと考えた方がいい」と警鐘を鳴らす。

 来オフに迫っている次回WBCへ向けて「せっかく侍ジャパンの組織が常設されているのですから、韓国に偵察隊を送り込んでもいいのでは」と提言する。“熱すぎる日韓戦”が戻ってくるのかもしれない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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