西武がベルーナDの「暑さ・寒さ」を改善へ ビル売却益2600億円の一部を投入…観客増見込み
売却益約2604億円の一部を西武戦の観戦環境改善に充てる
ベルーナドーム懸案の“暑さ・寒さ対策”に道が開かれた。西武ライオンズの親会社である「西武ホールディングス(HD)」は12日、東京・赤坂プリンスホテルの跡地に建設した大型複合商業ビル「東京ガーデンテラス紀尾井町」を、米投資ファンド「ブラックストーン」に約4000億円で売却すると発表。これがきっかけになるかもしれない。
東京ガーデンテラス紀尾井町の帳簿価格は約1396億円で、売却益は約2604億円となる。この資金は負債の返済、インバウンド需要を見込んでの品川など主要ホテルのバリューアップ(改装)、自社株買いなどの他、西武戦の観戦環境改善にも充てられるという。
西武球団関係者は「観戦環境改善策の具体的な中身はこれから検討されますが、本拠地ベルーナドームの暑さ・寒さ対策などが考えられます」と指摘。「今季観客動員数の昨年比9%増などと相まって、球団経営やチーム強化の後押しになりそうです」と胸を躍らせている。
ベルーナドームは屋根を柱で支える構造で壁がない「自然共生型ドーム」。風が通り抜け、天候と風向きによってはスタンドの一部に雨が吹き込むこともある。夏は熱気がこもりやすくて蒸し暑く、春先や冬は吹きさらしで底冷えがすることがあり、懸案となっている。
そんな中で西武は今季、球団ワースト記録の91敗を喫し、パ・リーグ最下位に沈んだ。それでもホームゲームの観客動員155万5280人は、昨季(142万2853人)に比べると9.3%増。1試合平均2万1601人も昨年(2万40人)比7.8%増で、ファンはまだまだ熱い。
今年6月の西武HDの定時株主総会では、球団の成績不振を受けて後藤高志オーナー(西武HD代表取締役会長)が「オーナーとして責任を痛感している。常勝軍団をしっかり取り戻す改革を、先頭に立って進めてまいりたい」と宣言した経緯もある。
もともと2011年3月に閉業した赤坂プリンスホテルは、プロ野球と縁が深く、在京以外の球団が東京遠征時の定宿として利用することが多かった。特に同ホテルを大のお気に入りにしていたのは、中日、阪神、楽天で監督として指揮を執った星野仙一氏(2018年死去)。館内の喫茶店では、星野氏特注メニューのオムライスが報道陣らに振る舞われることもあった。巡り巡って、ライオンズを救うことになるか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)