戦力外→球団広報→超一流企業の営業マン 元燕右腕の今…願うセカンドキャリアの“拡大”

元ヤクルト・徳山武陽さん【写真:町田利衣】
元ヤクルト・徳山武陽さん【写真:町田利衣】

徳山武陽さんはソニーマーケティング株式会社で法人営業を行う

 元ヤクルト投手の徳山武陽さんは2017年限りで現役を引退し、現在はソニーマーケティング株式会社で法人営業の仕事を行っている。引退後は球団職員として広報業務や野球振興に務めてきたが、一念発起してまるで違う世界へ転身。そこには「プロ野球選手のセカンドキャリアを明るくしたい」という熱い思いがあった。

 引退から2年後の2019年、徳山さんは野球界から離れるという大きな決断を下した。知人の紹介や、自ら転職サイトに登録して職探し。29歳にして初めて履歴書も書いた。面接では野球界で結果を出すためにどういった工夫と努力をしてきたかをアピール。縁あって同社への入社が決まった。

「外の社会に出ていってみたいと思ったのがひとつです。どうしてもプロ野球選手は戦力外になるとその先がないみたいに捉えられがちだと思います。自分の気持ちとしては、野球だけじゃないところでも頑張ればやれるんだぞというのを見せたくて挑戦してみたいと思いました」とキッカケを明かす。

 当然だが“特別扱い”はない。最初は専門用語やビジネス用語を聞き取れず四苦八苦したが、持ち前の努力と周囲の協力を得て乗り越えてきた。数年ごとに部署異動があり、現在は3部署目。担当しているのは、放送局やプロダクションに入っているカメラなど撮影してから放送するまでのシステムを全般的に提案するビジネスと、ディーラーに協力してもらいソニーの業務製品を中心に販売するビジネスだ。

「全く違う世界でもできることを証明できたら野球に恩返しできるかな」

 営業職なので数字のプレッシャーもある。クレームがくることもある。それでも「いろいろな方に出会えるのが好き。それを通しての営業で数字を達成できると、結果に残る部分なので一層うれしいです。それに今いる環境はチャレンジすることを後押ししてくれる。数字と活動をどちらも評価してくれるので重圧はありつつ、いいバランスを保てています」と充実の表情を見せた。

 業務の一方で、この1年間は自ら英語の勉強に取り組んだ。朝6時半に開店する会社近くのマクドナルドで9時まで勉強し、その後出社する日々。休日も自宅で机に向かった。270点だったTOEICの点数は、1年間で目標としていた650点をクリア。元アスリートらしい集中力を発揮した。

 2011年育成ドラフト1位で立命館大からヤクルトに入団。支配下をつかみ、2015年には救援としてリーグ優勝に貢献した。しかし2016年には国指定難病の「黄色靱帯骨化症」を発症。壮絶なリハビリを経て実戦復帰した。「周囲から教えを乞うこと。コミュニケーションをしっかりとるということは、チームスポーツをしてきた僕らは一般社会でも活きていると思います」とうなずいた。

「自分が全く違う世界でもできることを証明できたら、ある意味、野球に恩返しができるのかなと思っています。野球ばかりしているとその先の就職が難しいとか、マイナスな面を思ってしまいがちですが、ちゃんと野球を頑張っていればその先もやれると自分なりに思っているところがあるんです」。楽しそうに働く徳山さんの姿と言葉が、それを体現していた。

(町田利衣 / Rie Machida)

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