人的補償に抱いた違和感…FA選手から「申し訳ない」 当事者が訴える“ルール変更”

ソフトバンク時代の藤岡好明氏【写真提供:産経新聞社】
ソフトバンク時代の藤岡好明氏【写真提供:産経新聞社】

藤岡好明は2013年オフにソフトバンクから人的補償で日本ハムへ

 ソフトバンク、日本ハム、DeNAで15年プレーした藤岡好明投手は2013年オフ、フリーエージェント(FA)でソフトバンクに加入した鶴岡慎也の人的補償として日本ハムに移籍した。発表後初めて顔を合わせた鶴岡からは「申し訳ない」と謝られたという。藤岡は当事者同士が気を遣うような、2008年から続く現行制度について「変だなと思いました」と当時の心境を振り返り、より良いものにするために人的補償から「違う形を模索していって欲しい」との願いを語った。

 2013年オフに8年間所属したソフトバンクから日本ハムへ移籍した。年が明けた1月中旬、ソフトバンクの施設で練習していた藤岡のもとに鶴岡が歩み寄ってきた。

「なんで藤岡なん? 申し訳ない」

 ソフトバンクでの8年間で計255試合に登板し、6シーズンで30登板をクリアしていた。実績のある藤岡が自身のFAで移籍を強いられることになったためか、鶴岡からの予期せぬ“謝罪”だった。

「自分からしたら『そんな、謝らないでください』って感じでした。選手が頑張って取得した権利なのに、気を遣うような制度って変だなとは当時は思いました」

 藤岡自身はいろいろな環境で野球人としての知見を広げたいという考えもあり、人的補償の対象になったこと自体にネガティブな感情はなかった。それでも「人的補償」というワードや、2008年から導入されているFA選手の年俸に応じてA〜Cにランク付けする現行の制度には違和感を覚える。

ソフトバンク、日本ハム、DeNAで活躍した藤岡好明氏【写真:湯浅大】
ソフトバンク、日本ハム、DeNAで活躍した藤岡好明氏【写真:湯浅大】

現行のシステムが「ベストだとは思って欲しくはないです」

「制度に関してはアップデートしていって欲しいなとは思います。現状がベストだとは思って欲しくはないです。FAで移籍する選手が出るたびに議論されるけど、現時点では何も変わっていない。個人的にはランクとかではなく、違う形を模索していって欲しいなと思っています。選手同士が気を遣うような形にはなって欲しくないですね。現役ドラフトもできましたし、人的補償が変わっていくことにも期待したいです」

 藤岡は2013年夏に肝機能障害を患った。入院期間を含め約2か月の完全休養を経て、復帰へのリハビリに励んでいる段階で人的補償となった。稀有な状況での移籍となった。

「それでも自分を選んでくださった日本ハムには感謝しています。ただ、リハビリ期間中だったので、球団が変わったことで治療の担当者や施設も変わってしまうのは難しい部分でしたし、違和感はありましたよね」。自身の体験をもって、持論を述べた。現在でも当時の思いは変わらぬままだ。

(湯浅大 / Dai Yuasa)

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