戦力外→コーチ就任も…1年で選んだ退団 37歳で収入激減、安定を捨てた異例の決断

ソフトバンク、日本ハム、DeNAでプレーした藤岡好明氏【写真:湯浅大】
ソフトバンク、日本ハム、DeNAでプレーした藤岡好明氏【写真:湯浅大】

藤岡好明はDeNAの2軍コーチを1年で退団し、独立Lで現役復帰した

 ソフトバンク、日本ハムを経て2016年3月にトレードでDeNAに移籍した藤岡好明投手は2020年までの5年間プレーし、戦力外通告後、2021年はそのまま2軍投手コーチを担当した。しかし1年で退団し独立リーグ・九州アジアリーグに所属する「火の国サラマンダーズ」で投手コーチ兼任で現役復帰した。サラマンダーズで2年、今季はくふうハヤテでプレーしたが、コーチという“安定”よりも収入面で大きく違うチームでの現役を選んだ思いをFull-Countに明かした。

 FAでソフトバンクに加入した鶴岡慎也の人的補償で、2013年オフに日本ハムへ移籍。その後、2016年開幕直後にDeNAへトレードとなった。DeNAでのトータルでは2軍生活が長かったが、中継ぎのベテランとして後輩からの人望は厚く、2019年には35試合に登板し、防御率1.86と安定した成績を残した。

 しかし35歳で迎えた2020年は、4試合の登板で1回2/3を4失点の防御率21.60。オフの電話で直感した。「結果がでていないし、そのときはもうダメかなと思いました」。戦力外通告とともに2軍投手コーチ就任を打診され、受諾した。だが結局、そのコーチ業も1年で終結。自ら退団を申し出たのだった。

「現役あがり1年目で、選手たちは僕のことをよく知っているからいろいろな意見を言いやすい。ただ僕はチームとしての指導方針もわかる。コーチは選手へ正しい道を作ってあげないといけないし、選手の言い分ばかりを聞いて道がそれてしまうのはよくない。そこがけっこう難しくて……。コーチをやったことで学びもたくさんあったのですが、1度離れた方がいいのかなと思いました」

 コーチは教えるというよりは、あくまで助言する立場だと考えている。そこに立ち返った時に自分の“引き出し”の数が少ないと実感した。「今はこれをやったほうがいい。なぜならと……説明できるためにも、自分自身が多くのことにトライしていく必要があるのではないかなと思いました」。

収入は激減も「プロ野球生活でお金を確保しておくというのは決めていた」

 DeNA退団後にサラマンダーズから声がかかり、投手コーチ兼任で現役復帰を果たした。サラマンダーズでは2年間プレーし、退団後の今季はウエスタン・リーグに参入したくふうハヤテに入団した。NPB球団でのコーチ業とは収入面で大きく違う3年間を送った。

「コーチを3年間やっていたとしたら、お給料は全然違います。半分以下どころじゃないですよ(笑)。でもそれでいいんじゃないかと思います」

 プロ入り前から、プロが終わった後にやりたいことをやるための貯金はしていたという。「今しかできないことをやりたいと思っていました。やめてからの資金をちゃんと貯めておこうと。だからプロ野球生活でお金を確保しておくというのは決めていた。やりたいことにお金を費やすことは決してマイナスなことではないので」。

 プレーヤーとして成長するために、さまざまな環境で野球を学びたいというのが藤岡の思いでもあった。高校野球(宮崎日大)から社会人(JR九州)、15年間のプロ野球ではセ、パで計15年。独立リーグで2年、2軍戦新規参入球団も“勉強”した。

 来年3月に40歳を迎えるが学ぶ意欲は衰えていない。「もうちょっと現役でやりたいと考えている。海外の野球にも触れてみたいという思いがあります」。自分の視野を広げるためにも、ハヤテを1年で退団した。新たなプレー先はニカラグアに決まった。NPBを経験した日本選手がいない国をあえて選択した。“球道”を模索する藤岡の野球人生はまだまだ終わらない。

(湯浅大 / Dai Yuasa)

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