過酷な鷹の残り1枠争い 専門家が注目した24歳の“武器”…経験豊富30歳は「目立てない」
![ソフトバンク・前田純【写真:竹村岳】](https://full-count.jp/wp-content/uploads/2025/02/11194446/20250211_jmaeda_tg.jpg)
2022年育成ドラフト10位で入団し、昨年9月に1軍初登板初先発で初勝利
パ・リーグ連覇を狙うソフトバンクの先発投手陣は、昨年7勝の石川柊太投手がFAでロッテへ流出したが、一方で上沢直之投手が2年ぶりに日本球界へ復帰し、鷹のユニホームに袖を通した。さらに、現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は、残り少ない先発ローテの枠を虎視眈々と狙う“左腕4人衆”に注目している。
「ソフトバンクの先発ローテは、エースの有原(航平投手)、(リバン・)モイネロ(投手)、(カーター・)スチュワート(・ジュニア投手)、大関(友久投手)、上沢まで確定的。実質あと1枠だと思います」と野口氏。最後の切符を手にする候補として、前田純投手、前田悠伍投手、松本晴投手、浜口遥大と左腕4人の名前を挙げる。そして宮崎キャンプを視察した上で、「個人的に一番目についたのが、前田純でした」と明言した。
沖縄出身の前田純は、中部商高、日本文理大を経て、2022年育成ドラフト10位でソフトバンク入り。2年目の昨年7月24日に支配下登録を勝ち取り、9月29日の日本ハム戦(エスコンフィールド)に初登板初先発すると、6回3安打無失点の快投を演じ初勝利を手にした。1軍登板はこの1試合のみだったが、24歳が今年以降へ向けて伸びしろを感じさせるには、十分な投球内容だった。
「前田純は力感なく、ひょいと投げてくる印象です。それでいて伸びのあるストレートが来る。そのギャップが相手打者を幻惑するのです。投球フォームやスピードガン表示から受けるイメージでストレートを打ちに行く打者は、全て差し込まれます。さらに遅い変化球(カーブ、チェンジアップ)をまじえてくるので、なおさら打ちにくいのです」と野口氏は解説する。「松本晴も前田純と似たタイプで、さらに変化球が多彩ですが、(フォームと球の)ギャップは前田純の方が大きいと思います」と付け加えた。
「経験値ピカイチ」も「いきのいい若手に囲まれ目立てない」浜口
大阪桐蔭高時代に甲子園を沸かせた、弱冠19歳の前田悠に関しては、野口氏は「まだ本当のプロの体にはなっていないと思うので、個人的には慌てず、徹底的にトレーニングをしてから勝負した方がいいと見ます」と慎重だ。
また、三森大貴内野手とのトレードでDeNAから移籍した浜口は、プロ9年目で3月には30歳となる。野口氏は「浜口の経験値は、4人の左腕の中でピカイチ。得意のチェンジアップ、フォークのキレも相変わらず」と評価しつつ、「まだそこまで強く投げていなかったのかもしれませんが、実際に投げている球の力は一番弱かった。いきのいい若手に囲まれ、あまり目立てないのがつらいところです」と感じている。
以上の左腕4人が先発ローテの残り1枠を争うだけでも過当競争だが、「右腕にも候補はいます。(昨年3勝に終わった)東浜(巨投手)が巻き返しを期しているでしょうし、現役ドラフトでDeNAから加入した上茶谷(大河投手)、(昨年19試合に先発し7勝7敗だった)大津(亮介投手)も争いに絡んでくると思います」と野口氏が指摘する過酷な状況である。
小久保裕紀監督が起用に頭を悩ませそうなほど、有力な人材がひしめくソフトバンク投手陣。先発の駒がそろわない他球団から見れば、ぜいたく過ぎる悩みではある。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)