混戦の2018年ペナントレース、前半戦を「得失点の波」で解析【パ編】

西武・辻監督【写真:荒川祐史】
西武・辻監督【写真:荒川祐史】

打線次第の西武、攻撃力が上がってきた日ハム

 統計学では、時系列データを「移動平均」という指標で平滑化することがあります。今年のペナントレース前半戦における各チームの得点と失点の移動平均を測っていわゆる「調子の波」を可視化してみます。

 まず移動平均を説明します。移動平均は大きく変動する時系列データについて、その大まかな傾向を読み取るための統計指標です。株価の大まかな変動を捉え、売買のタイミングを計る際によく使用されます。

 この移動平均を使って、各チームがペナントレース前半戦のどこでどのような波に乗れたかを検証してみます。

 以下のグラフでは7試合移動平均において「得点>失点の期間はレッドゾーン」「失点>得点の期間はブルーゾーン」として表しています。

 なお、グラフの縦線は、

 3、4月|5月|交流戦|交流戦後

 を表しています。

 今回はパ・リーグ6球団を、8月2日時点での成績順で紹介します。

ライオンズの得失点推移グラフ【図表:鳥越規央】
ライオンズの得失点推移グラフ【図表:鳥越規央】

◯西武ライオンズ

 開幕から5月上旬まではとにかく打線が機能し、得点の移動平均が9点を超えるほどの大爆発を見せ、チームのスタートダッシュに貢献していました。ここまでチームOPSは0.815と飛び抜けていますし、チームの得点圏打率も.327と異次元の勝負強さを発揮しています。打線に目を引きがちですが、開幕から9連続クオリティスタート(QS)を達成するなどペナント序盤は先発投手陣の安定も光りました。

 ただ、5月中旬以降、投手陣の失点が大きく目立つようになりました。特に救援投手陣が安定せず、打線が大きなリードを奪っても、そのリードを食い尽くすような戦いぶりが増えてきました。5月中旬から交流戦前までは、その失点を上回る得点を稼いでしのいできた様子がグラフから伺えます。

 交流戦以降は失点の移動平均が5点を超える水準で推移しているため、攻撃陣が5点以上取れば勝ち、それ以下なら負けという、完全に打線の調子次第という状況になっています。8月のスケジュールでは、完全に冷房の効くドームでの試合が7試合しかなく、投手起用を含め選手の体調管理に十分留意する必要があります。最後まで打ち勝つ野球で突き進むのか、救援陣の整備で失点を防ぐのか。西武優勝のカギはそこにありそうです。

ファイターズの得失点推移グラフ【図表:鳥越規央】
ファイターズの得失点推移グラフ【図表:鳥越規央】

◯北海道日本ハムファイターズ

 42試合目を境に戦いぶりが変貌していることがわかります。

 序盤は得点力はそれほどではなくても、投手陣が機能し、平均3~4点の失点で抑えており、勝ちを拾っている様子が伺えます。

 交流戦に入り、得点力が増強されています。この時期から

1番 西川遥輝
2番 大田泰示
3番 近藤健介
4番 中田翔
5番 レアード、アルシア

 という上位打線が機能し、試合序盤での先制点をとって優位に試合を進められるようになりました。6月22試合のうち12試合、54.5%の確率で初回に得点しています。実に2試合に1試合は優位な展開に持ち込めたわけです。

 7月以降、先発投手陣のQS率が35%と本調子ではないのですが、打線の援護と、救援投手陣の踏ん張りで勝ちを収めています。

 前年に大きな戦力が抜けた後に結果を残していたファイターズだけに、後半のスパートの掛け方に注目です。

チャンスに打てないソフトバンク、先制できないオリックス

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