国立大進学&巨人女子入り…麟太郎の妹が異例の挑戦 “二刀流”切り開いた1冊の手帳

計画性の大切さ、目標の立て方を学んだ高校生活
岩手・花巻東の女子硬式野球部で主将も務めた佐々木秋羽(しゅう)内野手は、この春から筑波大に入学して、巨人女子チームで野球を続ける。自らの思考を深めてくれた高校生活を振り返り、新たな道に進む。
「正直、ここまで野球を続けるとは思わなかった」
クスっと微笑む佐々木は、想像していなかった未来に胸を躍らせる。花巻東に入学したばかりの頃は「教師になる」ことを目指していた。特別進学コースで学びながら、同校の男子硬式野球部監督で父の洋氏、花巻東OBで現在は米スタンフォード大でプレーする兄・麟太郎の影響もあって始めた野球とも真摯に向き合った。「濃密な時間だった」高校生活を通して、佐々木は将来像が変化していく自分に気づいていった。
思考の変化には、1冊の“手帳”も影響している。花巻東では、人生を戦略的に生きるための特別カリキュラムを導入している。全校生徒は、オリジナルの生徒手帳を通して、日頃の小さなものから中長期的なものまで、確かな目標を掲げて高校生活を送る。佐々木は言う。
「学校全体で目標設定を大事にしているのですが、1冊の手帳を通して計画性の大切さ、目標の立て方を学びました」
具体的な事柄や目標数値を記して、日々の思考を高める。「英単語テストで満点合格を目指すなど、小さいことでも達成していくことを心掛けて過ごした」。目標を達成できなかった時は「×」印を示し、その過程や経験を次につなげる。「目指すべきもの」を書き記すことで意識や行動が変わっていくことを実感した。
憧れの甲子園にも立って全国準優勝
人生設計も立てた。「100歳までにやりたいこと」、あるいは「100個のやりたいこと」も、その手帳には記した。
「1日24時間寝る、留学する、犬を飼う……。『やりたいこと』をとにかく書きました。何個か達成したものもありますが、まだまだですね」
屈託のない笑顔が弾ける。3年夏の全国高校選手権では、主将としてチームを牽引して準優勝。両親、そしてアメリカから一時帰国していた兄も駆けつけて応援してくれた甲子園で、決勝を戦えたことは佐々木にとって大切な思い出となった。「やりたいこと」の1つが、叶った瞬間でもあった。
目標を定めることの大事さを身をもって感じた佐々木は、さらなる高みを目指すようになった。「なりたい自分」が変化していく。高校卒業後の進路を筑波大に定め、そして新たな挑戦として巨人女子チームの入団を手にした。大学では体育専門学群で動作解析などを学ぶ予定だ。巨人女子チームの練習場所までは電車で約2時間。平日練習に、週末は試合もこなすハードな日々が待っているが、佐々木の表情はどこまでも明るい。
「時間の使い方は大事になってくると思います。ただ、常に目標を持ちながら過ごした高校生活で、時間の有効活用も学ぶことができたので大丈夫です」
新たな人生を見つめる18歳。高校で持ち歩いた手帳には、野球選手として「30代後半に引退」とも書き記した。
(佐々木亨 / Toru Sasaki)
