人的補償で移籍、パ・リーグで開花なるか 厚い選手層も…28歳右腕の“1.04”

ソフトバンク・伊藤優輔(左)と楽天・小森航太郎【写真:冨田成美、栗木一考】
ソフトバンク・伊藤優輔(左)と楽天・小森航太郎【写真:冨田成美、栗木一考】

3年間で着実に打撃向上、2024年には2軍の盗塁王に

 2024年オフには計9人がFA宣言を行った。その中で、人的補償として選手が移籍したのは2例。楽天からヤクルトに移った茂木栄五郎内野手の補償となった小森航大郎内野手、ソフトバンクから巨人に移籍した甲斐拓也捕手の補償、伊藤優輔投手。パ・リーグに新加入した2人は移籍1年目で活躍できるのか。その可能性を探りたい。

 小森は宇部工業高から、2021年のドラフト4位でヤクルトに入団。プロ1年目の2022年から2軍で22試合に出場し、打率.200と苦しんだものの貴重な経験を積んだ。続く2023年は2軍での出場機会を49試合と倍以上に伸ばし、打率.230、3本塁打、8盗塁と前年からの成長を示した。

 そして、3年目の2024年は2軍で主力の座をつかみ、110試合に出場して規定打席にも到達。打率.252と着実に確実性を高めたことに加え、24盗塁を記録してイースタン・リーグの盗塁王に輝く活躍を披露。9月には1軍デビューも果たすなど、今後に向けて大きな期待を抱かせた。

 1軍出場は4試合にとどまったが、2024年からは二塁に挑戦。二塁60試合、遊撃手で52試合に出場した。今季の楽天では、ドラフトで5球団が競合したゴ宗山塁内野手が遊撃手としてオープン戦から躍動。また二塁には、昨年にいずれも自身初となるベストナインとゴールデン・グラブ賞に輝いた、2023年の盗塁王・小深田大翔内野手が確固たる地位を築いている。それに加えて、2024年に遊撃手のレギュラーを務めた高い守備力に定評のある村林一輝内野手も控えている。レギュラー定着に向けて厳しい戦いが待ち受けていると言えよう。

 ただし、昨季は二塁では小深田が131試合、遊撃手では村林が138試合と、絶対的レギュラーの2名が大半の試合に出場していた。その一方で、それ以外の選手の中では黒川史陽内野手が二塁手として14試合に出場したのが最多であり、遊撃手として10試合以上に出場した選手は村林以外に1人も存在しなかった。

 宗山の加入によって二遊間のポジションは一気に激戦区となったが、控えの選手層が薄いことが否めない状況でもある。さらに、昨季のチーム盗塁数はリーグトップまで1個差の90と、脚力のある選手が重用される環境でもある。小森は持ち前の俊足を活かして1軍定着を果たし、新天地で活躍の場を大きく広げることができるだろうか。

トミー・ジョン手術を乗り越え、昨季は2軍の守護神に

 伊藤は都立小山台高、中央大、三菱パワーを経て、2020年のドラフト4位で巨人に入団。プロ1年目の2021年は故障もあって1軍登板を果たせず、同年11月にはトミー・ジョン手術を経験。長期の離脱が見込まれる状況となったこともあり、同年オフには育成選手契約に移行した。

 1年以上にわたる長いリハビリを乗り越え、2023年に2軍で実戦への復帰を果たした。2024年には2軍で40試合に登板して復活をアピールし、守護神として14セーブを挙げて防御率1.29と支配的な投球を披露。この活躍が認められ、同年7月には支配下への復帰を勝ち取っている。

 同年には自身初となる1軍のマウンドも踏み、8試合に登板して1ホールド、防御率1.04と好投。1軍の舞台でも自らの投球が通用することを証明した。ソフトバンクに移籍して迎える2025年シーズンも前年同様に安定した投球を見せ、新天地でさらなる飛躍を果たしたいところだ。

 プロ1年目の2021年は16試合で防御率4.30と安定感こそ欠いたものの、23イニングで30個の三振を奪い、奪三振率11.74と圧倒的な数字を残した。2023年の復帰登板でも1イニングで2三振を記録しており、最速150キロを超える快速球を活かした奪三振力の高さが大きな持ち味であることがうかがえる。

 ただし、2024年は2軍で防御率1.29と安定感抜群の投球を見せた一方で、奪三振率は7.29と、以前に比べて低下していた。しかし、1軍では8回2/3で奪三振率8.31という成績を残しており、レベルの高い舞台で一定以上の数字を記録した点は頼もしい要素だ。

 与四球率に目を向けると、2021年には2軍で与四球率6.26と制球に苦しみ、防御率が悪化する要因の一つとなっていた。しかし、2024年には2軍で与四球率4.07と数字が改善され、1軍では与四球率3.12とさらに成績が向上。課題となっていたコントロールの面で安定の兆しが見られたことは、今後に向けて大きな期待が持てる要素といえよう。

 イースタン・リーグの盗塁王に輝いた脚力という大きな武器を持つ小森は、二遊間の控えがやや手薄という楽天のチーム事情を、出場機会の増加につなげたいところだ。伊藤も昨季は1軍において奪三振力の高さと制球力の向上を示しただけに、層の厚いソフトバンクの投手陣に割って入り、強い存在感を放つ可能性は大いにあることだろう。

 小森と伊藤は人的補償での移籍をチャンスに変えて、新天地で頼もしい新戦力としてチームに貢献することができるか。それぞれ大きな強みを持つ両選手がパ・リーグの舞台で大きな飛躍を遂げるか否かに、シーズン開幕後もぜひ注目してみてほしい。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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