浅村栄斗が漏らした「早く打ちたい」 大台間近に本音…旧知のコーチが見た“重圧”

0-5の劣勢から左前適時打「何とか流れが来るかなと思って集中した」
■ロッテ 5ー2 楽天(15日・東京ドーム)
楽天は15日、東京ドームで主催したロッテ戦に2-5で敗れた。しかし「7番・指名打者」でスタメン出場した34歳の浅村栄斗内野手が、7回に左前適時打を放ち、2打数1安打1打点2四死球。平成生まれで初の通算2000安打達成まで、あと「2」と迫った。
劣勢でチームメートを鼓舞した。0-5とリードされて迎えた7回の攻撃。楽天は無死一、二塁とするも、村林一輝内野手と宗山塁内野手が連続三振。チャンスがしぼみかけていた。ここで浅村はロッテ2番手の右腕・八木彬投手にカウント0-2と追い込まれながら、ボール球のフォークを2球見送った後、やや高く外角のストライクゾーンに来たフォークをジャストミート。打球は左前で弾み、二塁走者がホームに滑り込んだ。
試合後、報道陣に囲まれた浅村は「0-5の展開でしたが、ここで打てば何とか流れが来るかなと思って集中しました。いい高さのボールをしっかり打てました。昨日3本打てた(14日の同カードで4打数3安打)だけに、なおさら今日が大事だと思っていたので、よかったです」とつぶやくように語った。
浅村は今季開幕以来、個人的には不本意なシーズンを送っている。昨季チーム最多の76試合で4番を張った男が、5番でスタートし、すぐに6番に下がり、いったん3番に上がったものの、4月27日・ソフトバンク戦の第4打席から5月9日・日本ハム戦の第2打席まで、自己ワーストの35打席連続無安打(5四球を含む)と低迷。最近6試合は下位の7番を打っている。
自身も現役時代に右のスラッガーだった後藤武敏打撃コーチは「僕も25タコで、ようやく1本打った後、また20タコだったことがあります。打てた翌日の試合でまた1本打てるかどうかが、とても大切なのです。そこで打てれば、いい感覚が残り、調子が上がっていく。ですから、あいつ(浅村)はこれからだんだん調子を上げていくと思いますよ」と見解を示した。
現役時代西武でもチームメート「ここまで積み上げてくるのを見てきた」
さらに後藤コーチは「チームとしては4番だろうと7番だろうと、格と言いますか、試合に出てもらわないと困る選手です。ただし、本人はいろいろな思いを抱えながらやっていると思います。それを飲み込んで文句ひとつ言わず、ひたむきにやっている」と指摘。「そもそも、キャンプで一番バットを振っていたのも浅村でした。あいつは多くを語るタイプではありませんが、その背中から若手が学べることは多いと思います。僕はあいつのことを、めちゃくちゃか格好いいと思っていますよ」と称賛する。
浅村には、通算2000安打までカウントダウンに入った重圧も追い打ちをかける。後藤コーチは「残りのヒット数が1桁になったころだったでしょうか。あいつから珍しく『早く打ちたいですよ』という言葉を聞きました。僕には到底うかがい知れない、相当なプレッシャーの下でやっていると思います」とも証言した。
後藤コーチは現役時代、2003年から2011年まで西武でプレーし、2009年入団の浅村と同僚だった時期がある。楽天では2019年から2軍打撃コーチなどを務め、2023年から1軍打撃コーチに昇格してまた浅村と親しく接する機会が増えた。「僕はあいつのプロ1年目からライオンズで一緒にやっていて、ここまで積み上げてくるのを見てきましたから……」と感慨深げだ。
自分を熟知するコーチに見守られながら、浅村は「(通算2000安打に向けては)1本出たら、次にまた1本。1本ずつという感じでやっていきたいと思います」と自分に言い聞かせるように語り、東京ドームを後にした。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)