曽谷龍平が「死ぬ気で投げました」 5月の楽天戦で見せた真骨頂…左腕に残った“手応え”

オリックス・曽谷が自信を深めた楽天戦の3者連続三振
また、一つ“壁”を超えることができた。オリックスの曽谷龍平投手が、5月3日の楽天戦(楽天モバイルパーク)でのピンチを3者連続三振で切り抜け、飛躍につながる大きな自信をつけた。
「ここを抑えないと次のステップにいけないと思って、死ぬ気で投げました」。曽谷が真剣な表情で振り返った。
自ら招いたピンチだった。2‐0で迎えた7回、先頭の村林一輝内野手に右前打を許して無死一塁。次打者の宗山塁内野手を得意のスライダーで投ゴロに仕留めたが、グラブを弾かれ内野安打に。併殺で切り抜けたはずが、無死一、二塁とピンチは広がってしまった。
「単なるピッチャーゴロだったんですが、僕の中で『よっしゃー!』と思って二塁を見てしまって。めっちゃ、初歩的なミスをして、正直言ってヤバいと思いました」と明かした。首脳陣から課題と指摘されている守備で招いたピンチだったことも、曽谷の心理に大きくのしかかってきた。
しかし、ここからが2年目から先発ローテの仲間入りを果たしている曽谷の真骨頂だった。小郷裕哉外野手を3球で追い込み5球目のスライダーで空振り三振に。堀内謙伍捕手も5球目のスライダーで見逃し三振に仕留めた。代打・伊藤裕季也内野手は3球で追い込んだが、5球目から5球連続ファウルで粘られ、10球目のフォークで空振り三振に。
最後は粘って手にした圧巻の3者連続三振。それでも、曽谷は「伊藤さんにはあれだけ粘られましたが、打ち取れる気持ちしかありませんでした」。上体が突っ込んだファウルの内容を見て、三振を確信したという。
ソフトバンク戦の連敗を12で止める好投
昨季20試合に登板し7勝(11敗)を挙げたことで、3年目の今季は投球数の制限はなくなり、先発の柱としてさらに大きな期待を背負うことになった。しかし、4月16日の西武戦(京セラドーム)は5回3失点、同23日のソフトバンク戦(みずほPayPayドーム)も4回5失点と連敗を喫していた。
「連敗していましたし、やっぱりあの場面で抑えないと、勝てるピッチャーにはなれないですから。どう抑えるか、そこのところしか考えていませんでした。ああいう場面は1軍でもそう何回も経験できませんから、そこを抑えられたというのは、また一つレベルアップできたかなと思います」。5月10日のソフトバンク戦(京セラドーム)でも、7回に1死満塁のピンチを迎えたが投ゴロ、空振り三振で切り抜けて3勝目を挙げ、このカードの連敗を12でストップさせた。
「(ソフトバンクには)やり返したいという思いを強く持ってマウンドに上がりました。(チームとしても)勝てなかった状況だったので、勝ち切れたのは大きい。しっかりやり返せたので、これを継続して結果を出したいと思います」。喜怒哀楽を表に出さないクールな左腕が、静かに燃えている。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)