佐々木朗希に必要な「24」と「25」の改善 専門家が分析…日本での実績は「疑問符がつく」

「必ずしも160キロを計測しなくていい、問題は…」
右肩インピンジメント症候群で負傷者リスト(IL)入りしているドジャース・佐々木朗希投手。メジャー1年目の今季は8試合に先発し1勝1敗、防御率4.72と不本意な成績にとどまっている。復帰後、本領を発揮するための鍵は何か。現役時代に通算2038安打を放ち、引退後もオリックスなどで名コーチと称えられ、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏が分析した。
メジャーでの佐々木は、日本で最速165キロを誇ったストレートのスピードが思うように上がらず、制球の悪さが目立つことも多かった。今季通算34回1/3を投げ、奪三振数の「24」を上回る「25」四死球。ちなみに昨季はロッテで111回を投げ129奪三振、わずか40四死球だった。
「今後、佐々木が活躍できるかどうかは、スピンの効いた真っすぐでファウルや空振りを取れるかどうかにかかっていると思います」と新井氏は断言。「必ずしも160キロを計測する球でなくていい。問題は打者がホームベース付近で速さを感じる、質のいいストレートであるかどうかです」と説明する。
今季の佐々木は、どこまで故障が影響していたかは定かでないが、「自分でもストレートがいっていないという感覚があったと思います。だからこそ際どいコースを狙う分、ボール球が増え、球数も増える悪循環に陥っていた。フォークを多投してカバーしようとしていましたが、そもそもストレートに威力がない時には簡単に見極められてしまう球種です。さらにすっぽ抜ける球も増え、死球をぶつけたり、捕手が捕れないくらい遠くへ投げてしまうシーンが目立っていました」と新井氏は指摘する。
日本人メジャーリーガーのパイオニアで、日米通算201勝(NPB78勝、MLB123勝)を挙げた“レジェンド”野茂英雄氏も「自分の生命線は真っすぐの回転」と語っていたという。現役時代に近鉄で同僚だった新井氏は「野茂はほぼ、真っすぐとフォークの2球種だけでMLBに立ち向かいましたが、真っすぐの回転がよく、打者が真っすぐを狙っていてもなおファウルになる時には、早めに2ストライクを取れ、相手打者を真っすぐかフォークのどちらかにヤマを張らないと打てない状況へ追い込んでいました。対照的に、外角を狙った真っすぐがシュート回転して内寄りに行ってしまう時には、球威も削がれて長打を食らっていました」と回想する。
「ZOZOマリンでの投球を基準にはしない方がいい」
質のいいストレートを投げることが躍進の第一歩、というわけだが、新井氏は「本人もチームも、昨季までの本拠地ZOZOマリンでの投球を基準にはしない方がいいと思います」と釘を刺す。
「投手にとって正面から強風が吹きつけることの多いZOZOマリンでは、真っすぐは浮き、フォークは極端に落ちる。ストレートとフォークを軸とするタイプの投手には有利に働きますが、普通の屋外球場で同じ球が投げられるかというと、疑問符がつく」からだ。
「僕がオリックスの1軍打撃コーチを務めていた時に目の当たりにした、野田(浩司氏)の投球もそうでした」。新井氏は1995年4月21日、野田氏が千葉マリンスタジアム(現ZOZOマリン)で行われたロッテ戦に先発し、日本記録を更新する1試合19奪三振をマークしたシーンを思い返す。この記録には27年後の2022年4月10日、佐々木が同じZOZOマリンで完全試合を達成した時に19三振を奪い並んでいる。
球場の環境も、使用球も違うメジャーで、佐々木は改めてどんなストレートを投げ込んでいけるのか。日本で群を抜いていた身体能力を開花させられるかどうかは、そこにかかっているようだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)