悩める曽谷龍平…そっと寄り添った阿部翔太 届けた“助言”「絶対に変えないほうがいい」

オリックス・曽谷龍平(左)と阿部翔太【写真:栗木一考、小林靖】
オリックス・曽谷龍平(左)と阿部翔太【写真:栗木一考、小林靖】

5失点降板後、阿部翔太が曽谷龍平に伝えたアドバイス

 暗闇に光が差した。オリックスの3年目左腕、曽谷龍平投手が投手主将の阿部翔太投手の「何も変えなくていい」という助言で“迷路”から抜け出した。

「何が悪いのかもわからない状態だったので、聞いたんです。アドバイスのおかげで、早く“脱出”することができました」。18日の西武戦(ベルーナドーム)でプロ初完投を3連勝で飾った曽谷が、阿部への感謝の気持ちを率直に表した。

 今季4試合目の登板となった4月23日のソフトバンク戦(みずほPayPayドーム)で9安打5失点と乱れ、4回で降板しベンチでうなだれる曽谷の横に、阿部がそっと寄り添った。

「何か変えた方がいいですか」。胸のつかえを吐き出すように声を振り絞った曽谷に、阿部は「変える必要なんてない。勝ちがついていないだけやん」と即答した。

 曽谷は4月16日の西武戦(京セラドーム)でも5回9安打3失点で負け投手になっていたが、阿部には曽谷の球が悪いとは思えなかったという。「本人はショックを受けているようで、暗い表情でした。でも、変える必要がないくらい、いい球を投げていたんです。どう見ても悪いとは思えなかったんです。たまたま、不運な安打が失点につながったりして、勝ちがついてこなかっただけ」という阿部は、曽谷の身近な存在を例に言葉をつないだ。

「ヨシノブ(山本由伸投手、現ドジャース)やヒロヤ(宮城大弥投手)だって、調子が悪くなってもオフシーズンからやってきたことを変えない。分かっていると思うけど、ボールはいいし、たまたま打球の飛んだところが悪くてついていないだけ。ただ、それだけのことやろ。真っすぐで150キロ以上出して、スライダーもあれだけ曲がっている。普通に考えたら打者の方が嫌やから。絶対に変えない方がいい」

 アドバイスについて阿部は「変えなきゃいけないと考えることで、逆にボールがいかなくなってしまうことがあるんです。僕も比嘉さん(幹貴1軍投手コーチ)によく言われていることなんです」と明かした。

 曽谷は「2試合連続してダメでしたから、何かを変えなければいけないかなと思っていたんです。アドバイスでもやもやが晴れました。自分の持ち味はどんどん打者に向かって投げていくことだったんだ、と気づきました。慎重に投げるほど制球もよくない感じなので、そこは変えなくていいんだと思えました」と阿部に感謝する。

 以降の登板で曽谷は3連勝。西武戦では初の完投で、チームの連敗を3でストップさせ、中継ぎ陣を休ませることにも貢献した。4勝目にも「まだまだです。前半も折り返していないんで、浮かれることもありません。これからも少しでも長いイニングを投げようと思っています」と意気込んだ。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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