投高打低が“終わる”日…古田敦也氏が分析する現代野球　データ合戦は「限界ではない」

ラプソードの導入で「努力しやすくなった」

　レジェンド捕手は現代のデータ野球をどのように捉えているのか。現役時代は「ID野球の申し子」として活躍した古田敦也氏が、データに溢れる現在の野球界について私見を述べた。

「ラプソード」は、投じたボールの回転軸や回転効率などを測定・分析できる。もはやどの球団でも主流となり、自費で購入している選手も多い。「こういう直球を投げたい、スライダーはこう曲げたい、など目指すところが分かりやすくて、努力しやすいという意味では非常に良い時代になってきたと思います」。

　かつては受けた捕手が「今のはキレがいい」「伸びていた」と感想を伝え、投球は理想のボールを追い求めていた。だが「今は投げた感覚と数値が一致することで『この投げ方でいいのか』とよくわかる。投手にとってはレベルアップに繋がっていると思います」と、機器導入のメリットを語った。

　とはいえ対戦する球団も相手投手の各球種のデータを細かく分析している。情報をすべて把握されている状況ではあるが、「努力してどんどんレベルが上がる。球速も昔は140キロで、今は150キロが当たり前になっている。体も大きくなって、数値が上がるほど努力して乗り越えていくことも多いので。まだまだ限界ではないと思っています」。敵に“丸裸”にされることによる不利どころか、向上が促される側面があるという。

再現性の高い打撃練習用マシン「大谷のスイーパーも」

　ここ数年、日本球界は「投高打低」の傾向にある。「投手のレベルが高くなっているのは間違いないと思います」。しかし、このパワーバランスが変わる可能性は十分にあると見込んでいる。相手投手の球種データを基に回転数、軸など再現できる打撃練習用マシンを導入する球団が増えている。

「例えば大谷投手のスイーパーにしても、それまでは打席に立たないと見られないものでした。いくら映像で見ていても、やっぱり打席に立たないとどれぐらい曲がるのかわからない。それが再現されるわけですから。試合で打席に立つ前に（軌道を）見ることができるんだから、これはバッターにとって有利ですよね」

「データと現代野球」をテーマにしたテレビ朝日「GET SPORTS」（毎週日曜深夜1時55分、関東地区）では「ピッチャーのレベルは上がっていくと思いますし、それを打たなきゃいけないバッターのレベルも上がると思います。だから野球のレベルがどんどん、どんどん上がっていくので本当に楽しみです」と期待している。

　理想とする球を投げやすくなった投手と、事前に“体感”できるようになった打者。「再現性の高いマシンが出てきたことで、今は投高打低の時期が来ているけど、時代によって変わってくると思いますよ」。古田氏は野球界の未来へ思いを馳せた。

（湯浅大 / Dai Yuasa）