2軍で炎上続き、恐れた“若手の目” 576日ぶり1軍→7戦0.00…ハム玉井大翔、復帰までの苦難

2年ぶり1軍登板で「『おかえり』って多くの方に言ってもらいました」
日本ハムの玉井大翔投手は、5月3日の西武戦(エスコンフィールド)で576日ぶりの1軍復帰を果たした。そこから7試合(計5イニング)で防御率0.00を継続中。「『おかえり』って多くの方に言ってもらいました。やっぱ1軍いいな、野球をやっているなって感じがしています」と話す表情にも、充実感がにじむ。プロ入り後、初めて1軍登板なしに終わった昨季は、深い苦悩の中にいた。
2019年には65試合に登板、2021年から3年連続50試合登板とブルペンになくてはならない存在だった右腕。昨年4月に腰のヘルニアと診断され、復帰は早くて7月と告げられた。長期離脱となったが前向きにリハビリに励み、7月17日に2軍戦のマウンドに立った。しかし「一応最速復帰したんですけど、違和感みたいなものが残ったままやっていたので、そこで出力が上がらなかったっていうのはありました」。思うように投げられず、結果もついてこない。プロ野球人生で一番のどん底も味わった。
「怪我した直後ももちろんつらかったですけど、復帰した後もずっと打たれていたんです。2軍の若い子たちの前で投げるたびに打たれて、『どう思われているんだろう』とかも正直考えちゃったりして、そこもつらかったですね」
1軍では活きの良い若手たちが躍動し、自分の“席”はあっという間になくなった。「後輩が頑張っている姿はうれしい気持ちもありましたけど、やはり焦りというか。年齢的にも野球ができなくなることも想像する年齢ですし……」。30歳を過ぎ、そんな考えが頭をよぎるのも当然だった。
「今はシンプルに、やってきたことを出してダメなら仕方ないと思えている」
「途中からはもう逆に吹っ切れて、割り切るしかないなって」。後悔のないように、今できることに全力で取り組んだ。オフには腕の位置を下げる一大決心もあった。プロ9年目の今季、開幕は2軍で迎えたが8試合で防御率0.00と結果を残して4月25日に1軍昇格を掴んだ。
実は、「本当に勝負できるなって思えたのは、1軍に上がるちょっと前くらいなんです」と明かすように、手応えを得たのは昇格直前のことだった。やっと自分を取り戻し、追い詰めていた気持ちからも解放された。「今までは結果を残さなきゃとか1軍にいなきゃとかいろいろなことを考えていました。でも今はシンプルに、やってきたことを出して、ダメだったら仕方ないと思えているので、その準備はシンプルに考えてできていると思います」と変化も生まれた。
「あまり先は見ていなくて、本当に1試合1試合という気持ちです。先がある立場じゃないので、1年目くらいの気持ちでやっていきたいと思います」と玉井。首位を走るチームに帰ってきた32歳が、自慢の投手陣をさらに強固なものにする。
○著者プロフィール
町田利衣(まちだ・りえ)
東京都生まれ。慶大を卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。北海道総局で日本ハム、東京本社スポーツ部でヤクルト、ロッテ、DeNAなどを担当。2021年10月からFull-Count編集部に所属。
(町田利衣 / Rie Machida)