ド軍監督に同情も…MLBで目立つ“決断”の是非 つきまとう批判、専門家が驚きの提案

スコアは0-9、6回2死一塁の場面でキケ・ヘルナンデス内野手登板
メジャーリーグで野手の投手起用がまた物議を醸している。ドジャースは10日(日本時間11日)のパドレス戦で、6回2死までに0-9と大量リードされると、“キケ”の愛称で親しまれる内野手のエンリケ・ヘルナンデスを投手としてマウンドに送った。キケは最後まで投げ抜き2回1/3、36球3安打2失点。チームは結局1-11で敗れた。大谷翔平投手の二刀流とは“別次元”で、話題となっている。
6回といえば、まだ試合の中盤である。それでもドジャースのデーブ・ロバーツ監督は、2番手のマット・サウワー投手がめった打ちされスコアは0-9、2死ながら走者が一塁に残るとキケに登板を命じた。
今季のドジャースは先発要員の佐々木朗希投手、ブレーク・スネル投手、タイラー・グラスノー投手らが相次いで負傷者リスト(IL)入り。本来リリーフ専門の投手が比較的短いイニングで先発を任されるなど、救援陣にも負担がかかり、全体的に手薄となっている事情がある。キケの他にも、ミゲル・ロハス内野手が2試合に登板し、計3回7失点、防御率21.00の記録が残っている(日本時間13日現在)。
現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏は「同じナ・リーグ西地区のパドレス、ジャイアンツとの直接対決が続くドジャースは、先発投手陣の故障者続出でブルペン陣が登板過多に陥っているだけに、大量リードされた10日の試合にアンソニー・バンダ投手、タナー・スコット投手、アレックス・ベシア投手といった“勝ちパターン”の投手を絶対に登板させたくなかった。また、マイケル・コペック投手、カービー・イエーツ投手も故障から復帰したばかりで、無理をさせられない状況でした」と分析。
「翌日の同カードでは、実に8人の投手をつぎ込み5-2で勝ちました。前日に使わなかった投手を全員使って勝利をものした格好で、やはり前日の起用はやむをえなかったのだと思います。今後も野手がマウンドに上がる可能性はあると思いますよ」と、背に腹は代えられない状況に理解を示す。
ついて回る「敗退行為に近い」「ファンに失礼」との批判
ただ、「二刀流選手」として登録されている大谷は別として、野手を投手として起用する采配には、「敗退行為に近い」、「お金を払ってプロの試合を見に来たファンに失礼」といった批判がついて回る。
新井氏は「ドジャースのロバーツ監督は10日の試合では、ギブアップできるものなら、したい心境だったと思います」と察する。そして「試合時間を短縮するためにタイブレーク、ピッチクロックなどをこしらえたメジャーリーグですから、野手に投げさせるくらいなら、いっそギブアップできるルールを作ってもいいのではないでしょうか」と極論も口にした。
いずれにせよ、1軍戦にはいまだタイブレークも、ピッチクロックも導入されていない日本とは、野球文化の成り立ちが異なる。野手の投手起用に対するファンの受け取り方も違うと言えそうだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)