育成・芦田丈飛を変えた長文のLINE 田嶋大樹が込めた思い「その時に力を発揮できない」

オリックス・芦田丈飛【写真:小林靖】
オリックス・芦田丈飛【写真:小林靖】

芦田が意識する1軍を見据えた取り組み

 オリックス育成2年目の芦田丈飛投手が、チームの先輩、田嶋大樹投手のアドバイスで意識を変えて支配下入りを目指している。

「田嶋さんのおかげで、支配下になるために投げるのではなく、1軍に上がってローテーションで投げるための練習をするようになりました」と気持ちを新たに鍛錬を重ねている。

 芦田は英和高(千葉)、国士舘大、社会人オールフロンティアを経て、独立リーグ・ルートインBCリーグの埼玉武蔵ヒートベアーズに入団。2023年に抑えとして南地区リーグ優勝に貢献し、同年の育成ドラフト4位でオリックス入りした。

 1年目の5月中旬から先発で起用される機会が増え、2年目の今季はウエスタン・リーグで11試合のうち、調整登板1試合を除く10試合で先発。2勝2敗、防御率2.80と結果を残しつつある。

 田嶋から助言を受けたのは5月8日だった。芦田は、先発した同7日の中日戦(ナゴヤ球場)で、3回59球、被安打7、3失点で負け投手に。4月以降、イニング数を伸ばし、直前の試合では初めて7イニング目のマウンドにも立ち、支配下への道を着実に進んでいた。それだけに芦田は「大きなチャンスを逃してしまった」と落胆したという。

 傷心の芦田に届いたメッセージは、意識の変化を促すものだった。「結構、長文のLINEをいただきました。『ファームで抑えて支配下に上がることを考えていると思うけど、1軍のローテで回り続けるためにどういうピッチングをしたらいいのかを考えながら、今、頑張った方がいいよ』という内容でした」と芦田は振り返る。

田嶋が危惧した「すぐに戦力外になってしまうケース」

 支配下入りの目標を実現するため、投げる試合で結果を出すことしか考えられない育成選手にとっては、支配下はスタート地点であり通過点。目先の結果にとらわれず、将来の姿を思い描くことの大切さを田嶋のアドバイスから教わった。

 田嶋はアドバイスに込めた思いをこう語る。「支配下になるために野球をやっていたら、すぐに戦力外になってしまうケースがよくあります。そうではなくて、支配下になった後、どうやったら1軍に居続けることができるのかという気持ちで毎日を過ごした方がいいと思ったんです。2軍戦で抑えることが出来たら、というのは違うよと。常にいつ呼ばれてもいいような準備をしないと、その時に力を発揮できないよと話をしました。だから、毎日しっかりと心と体を準備しなさいと」。

 練習方法も伝授してもらった。先発投手の調整方法としてキャッチボールの球数や距離の取り方。「僕は独立リーグで中継ぎや抑えだったので、遠投とかも入れていなかったんです。キャッチボールでは近い距離で強い球を毎日投げて、キレを出すようにしています」と芦田は取り組みを語る。

 また、波留敏夫2軍監督の助言で、心拍数を上げる練習も取り入れた。「(外野のポール間を走る)PPや有酸素系はやっていたのですが、30秒間全力、30秒間休むというメニューを入れて、練習量を増やしたんです。暑さの厳しい時に1回上げてみたら、試合で投げるのがよりラクに感じるんじゃないかと思って」と、先発として長いイニングを投げるための工夫を凝らす。

 6月17日のソフトバンク戦(タマスタ筑後)、26日の交流戦、サムティ戦(大阪シティ信金)では、7回を投げ2失点、無失点と先発の仕事は果たした。サムティ戦ではテーマにする「ストレート中心で攻める」という投球で8安打は許したが、走者を出しても本塁を踏ませなかった。

 現在のチーム事情では、1軍は中継ぎ陣の充実が求められ、2軍では試合を作る先発陣の育成が課題となっている。芦田は独立リーグで中継ぎ、抑えを経験しているだけに、高島泰都投手のように先発と中継ぎができる貴重な存在になる可能性を秘める。

 厚澤和幸1軍投手コーチは、「映像などで投球内容などは確認していますが、ピッチングは上手なタイプです。枠の問題などもありますが、育成選手は諦めたら終わりなんです」とエールを送る。支配下登録の期限は7月31日。結果にこだわりながら、1軍のマウンドを見据え、無心で腕を振る。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY