広島、大逆転Vへの条件は? 「阪神が圧倒的に優位」も…専門家が指摘する“兆し”

広島・新井貴浩監督【写真:イワモトアキト】
広島・新井貴浩監督【写真:イワモトアキト】

中村奨の一発で40イニング連続無得点の貧打から脱出

 踏ん張りどころだ。セ・リーグ2位の広島が8日から本拠地・マツダスタジアムで、6.5ゲーム差をつけられている首位・阪神との直接対決3連戦に臨む。7年ぶりのリーグ優勝にこぎつけるためのキーポイントとは──。

「現状では阪神が圧倒的に優位。広島としてはゲーム差を詰めておくことが必要で、3つ全部取るくらいのつもりでいかないと……。逆に負け越したら、オールスター前に事実上ペナントレースの灯が消えてしまうことになりかねません」。こう危機感をあおるのは、現役時代に日本ハム、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏だ。

 広島は直近の6日、東京ドームで行われた巨人戦で3-2の逆転勝ちを収めた。3試合連続無得点の貧打にあえいでいたが、6回に中村奨成外野手が左翼席へ4号ソロを放ち、2日のヤクルト戦の3回に2得点して以来、実に41イニングぶりに得点。1-2とリードされて迎えた9回には大勢投手を攻め、2安打1死球で1死満塁とした後、菊池涼介内野手の2点適時打で逆転した。

 野口氏は「9回になってようやくカープらしい打撃が見られました」と評価。先頭のサンドロ・ファビアン外野手が外角低めの155キロの直球を右前へ。「それまでの3打席は先発の赤星(優志投手)に対し、引っ張りににかかり過ぎてカットボールやカーブを引っ掛け、内野ゴロを3つ重ねていましたが、9回の打席だけは違いました。この回は野間峻祥外野手、菊池、秋山翔吾外野手も逆方向への安打。「阪神との直接対決を前に、カープ打線に復調の兆しが見えたと言えるのではないでしょうか」と前向きにとらえた。

 昨季は完全に“投高打低”で、チーム打率はリーグワーストの.238だったが、今季は6日現在で同2位の.243に飛躍している。昨季の苦しんだ助っ人陣も、新戦力のファビアンがリーグトップの打率.308、10本塁打40打点をマークする活躍。エレフリス・モンテロ内野手も打率.261ながら一塁のレギュラーとして存在感がある。

32歳中崎が頼もしい復活「打者を打ち取る術を身に着けた」

 中継ぎ投手陣の活躍も目覚ましい。島内颯太郎投手は32試合に登板し防御率0.30、中崎翔太投手も29試合で0.69と出色。左腕の森浦大輔投手も34試合で1.16の安定感を誇る。守護神の栗林良吏投手は31試合9セーブ、防御率3.45といまひとつだが、代わりに左腕テイラー・ハーン投手が7セーブを挙げ、最近8試合連続無失点と調子を上げている。

 特に32歳の中崎は、2016~2018年のリーグ3連覇の際に守護神として貢献した後、長らく不振が続いていたが、昨季24試合、防御率1.96で復活を遂げた。今季はさらに頼もしい。野口氏は「うまい具合にマイナーチェンジを遂げたと思います。3連覇の頃は150キロを超えるストレートと切れ味抜群のスライダーで抑えていました。今はストレートの球速が140キロ台にとどまり、スライダーの切れもかつてほどではありませんが、フォーク、カーブ、ツーシームなども駆使し打者を打ち取る術を身に着けました」と称える。

 ただ、昨季の広島は8月終了時点で首位に立っていたものの、9月にリーグワーストタイの月間20敗(5勝)を喫して一気に転落し、最終的にBクラスの4位に終わった。それまで快進撃を支えていた投手陣が、貯めこんでいた疲労が噴出したかのように一斉に崩れた。

「今季も、頑張っているリリーフ陣がこのまま好調を持続できるかどうかが鍵。昨季のように登板過多で調子を崩さなければいいなと思いますが、そこが一抹の不安ではあります」と野口氏。昨季の二の舞は避けたい。カープの正念場はこれからだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY