対巨人打線は「精神的に楽」 大きすぎる岡本の穴…専門家が指摘する阪神との“決定的な差”

巨人・阿部慎之助監督【写真:矢口亨】
巨人・阿部慎之助監督【写真:矢口亨】

8HRのキャベッジも6月以降不振、ヘルナンデスも2軍調整中

 昨季セ・リーグ覇者の巨人は、6日に本拠地・東京ドームで行われた広島戦で逆転負けを喫し、首位・阪神とのゲーム差が今季最大の「8」に広がった。主砲の岡本和真内野手が左肘を負傷し、5月7日以降長期離脱。巻き返しVの可能性について、現役時代に日本ハム、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が分析する。

「今の巨人打線には長打の確率の高い選手が少ないので、相手バッテリーはあまり恐怖心を抱かなくて済みます。バッテリー側の心境としては、多少打率が低かったとしても、一振りで点を取れるホームランバッターは“打席に迎えただけでピンチ”なので、精神的にだいぶ楽です」。野口氏は“捕手目線”でこう評する。

 6日時点でリーグトップのチーム本塁打「46」を誇っているが、ただしチーム内では離脱が長期にわたっている岡本とトレイ・キャベッジ外野手が「8」でトップ。これに次ぐのは増田陸内野手の「6」。キャベッジも6月以降に限ると、25試合で打率.141(78打数11安打)、1本塁打と低迷している。来日2年目の助っ人エリエ・ヘルナンデス外野手が打撃不振で6月8日以降、2軍で調整。5月にトレードでソフトバンクから獲得した大砲リチャード内野手も、1軍では18試合で打率.095(42打数4安打)、2本塁打にとどまっている。

「代役で4番を務めることの多い吉川(尚輝内野手)は、健闘しているとは思いますが、本来1~3番を打ってこそ輝く選手ですから、ジャイアンツの首脳陣としてはつらいところでしょう」と首脳陣の心境を慮る。一方で、“ない物ねだり”をしていても、しかたがない。野口氏は「はっきりした方針転換が必要だと思います。これまで長打で勝ってきた巨人ですが、現状では手堅く1点ずつ取っていくスモールベースボールに振り切った方がいいのではないでしょうか。幸い投手陣は安定していますから」と提言する。

首位走る阪神は犠打数もリーグ断トツ「束になって取っていくしか…」

 6日の広島戦で巨人は2-3の逆転負けを喫したが、両チーム無得点で迎えた5回の攻撃では、左前打で出塁した小林誠司捕手を投手の赤星優志がバントで送り、2死後にオコエ瑠偉外野手の中前適時打で先制した。1-1の8回にも送りバントで1死二、三塁の好機をつくり、なおも申告敬遠などで2死満塁とした後、増田陸がしぶとく適時内野安打して勝ち越し点をもぎ取った。「あのように、束になって1点でも2点でも取っていくことを地道に続けるしかないでしょう」と野口氏は指摘するのだ。

 一方、首位を走っている阪神は、リーグトップの21本塁打を量産中の佐藤輝明内野手、リーグトップの56打点をマークしている森下翔太外野手らの強打のイメージが強いが、実は犠打数も84でリーグ断トツ。その点、巨人の犠打数はリーグで5番目の47で、リーグ2位の646安打(トップの阪神ともわずか1本差)を放っている割に、得点は同4位の220にとどまっている現実がある。

 岡本の復帰にいまだ明確なメドが立っていない中、阿部慎之助監督就任2年目の巨人打線に、思い切った発想の転換が求められているようだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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