代走要員のはずが…中日ドラ1が突然の開花「周りがびっくり」 裏切った監督の“下降予想”

中日・荒木雅博氏【写真:木村竜也】
中日・荒木雅博氏【写真:木村竜也】

中日で活躍した荒木雅博氏は6年目に開花した

 走攻守3拍子揃う元中日のスタープレーヤー・荒木雅博氏(野球評論家)は若手時代、代走、守備要員だった。プロ6年目の2001年はそこから抜け出して、8月中旬からは「1番二塁」で起用されて結果も出したが「勝手に(体が)反応するようになったんですよ」と振り返る。「何で打てているんだろう、わからない、というところまでいったら、ホントに俺って練習したんだなって思いました」と飛躍の“裏側”を明かした。

 プロ6年目の荒木氏は例年以上の練習量をこなしてキャンプインした。「ちょっとやり方を変えたりとか、いろんな方法をやってみたりとかもしました」。調子も上がった。2軍スタートだったが、2月の終わりには1軍に合流し、オープン戦に出場。プロ3年目からスイッチヒッターにトライしていたが、3月中旬に星野仙一監督から「もう左はええから」と言われ、右打席に専念するようになってからは打撃面でさらに結果を出すようになった。

「あの年のオープン戦は4割以上打ったんじゃなかったかな。2日連続猛打賞とかもあったと思う。ヘッドコーチだった山田(久志)さんに『荒木、今年のオープン戦は自分で開幕を勝ち取ったな。お前は絶対、いい選手になるから、とにかく今のまま練習を続けろ』って言われたのを覚えています。それまでの年は代走がいないから荒木をとりあえず(開幕1軍に)置いとけ、とかの立ち位置だったのが、その年に関しては自分の力で残れたってことでね」

 開幕スタメンまでゲットしたわけではなく、2001年も初出場は開幕2戦目の3月31日の広島戦(ナゴヤドーム)で山崎武司内野手の代走だったが、チャンスはすぐに来た。4月4日の横浜戦(横浜)で偵察メンバーの山本昌投手に代わって7番右翼で出て、4打数1安打。4月10日の巨人戦(ナゴヤドーム)では2番中堅で4打数2安打2盗塁、翌4月11日の同カードでも2番中堅で4打数2安打とバットでのアピールも続けた。

「たまに左ピッチャーが先発の時にスタメンで出て、けっこう結果をポンポンと出していったんですよね」。4月4日の横浜先発は野村弘樹投手、4月10、11日の巨人先発は工藤公康投手と高橋尚成投手でいずれもサウスポー。荒木氏の2001年はこの”左投手用”から始まった。「最初の頃は2軍が名古屋にいたら、そっちの試合にも出ていました。(昼に2軍、夜に1軍の親子ゲームで)下スタメン、上スタメンもありましたね」。

古田敦也からまさかの褒め言葉

 必死になって毎日をクリアしていくしかなかったが、この年の打撃力はこれまでと違った。「4月の終わりだったか、ヤクルト戦に出て三振した時に(ヤクルト捕手の)古田(敦也)さんに『お前、スイングが速くなったな』と言われたんです。それからですよね。ガンガンガーンって上がっていったのは」。 5月1日の巨人戦(東京ドーム)では2番右翼で6打数4安打1打点と大暴れ。2番中堅で出た6月5日の巨人戦(東京ドーム)ではプロ初本塁打も放った。

「覚えています。(巨人左腕のダレル・)メイからですよね。うれしかったですよ。ホームランなんて打てると思ってないですもん。高校通算でも2、3本くらい。2軍でも3本くらいかな。1軍の、しかも昔から見ていた東京ドームでホームランなんて、自分でもびっくりしました。そんなに振ってないんですよ。飛んでいったって感じ。よくいうヒットの延長ってこのことか、ホームランとか打てるんだ、俺って、と思いましたね」

 まだこの時期も常時スタメンではなかったが「あの年は4月からずっと好調をキープしていました」と話す。「夏くらいに星野さんが新聞で僕のことを“もう、あいつ、疲れてくるやろ、ずっと打っているから”ってコメントしていました。それを見て“何ぃ!”とは思っていませんよ。自分もそう思っていましたから。何で打てるんだろうと思いながら、ずっとやっていたんです。勝手に(体が)反応するんですよ」。そして、この状況が自信、手応えにつながっていった。

「これが練習の意味ですよね。反復練習というのは癖をつけるためにやるもの。試合中に、それを考えてやってもできないですもんね。無意識に,その形にするのが練習。それを体現できたというか……」。継続してきた練習の成果を実感するとともに打撃成績も上がっていった。守備は外野がメインだったが、8月中旬からは「1番二塁」に定着。のちに”アライバコンビ”と言われる「2番遊撃」の井端弘和内野手と二遊間を組んだ。

「6年目でしたけど、大卒だったら2年目ですからね」。プロ6年目の2001年は111試合に出場して、272打数92安打の打率.338、4本塁打、23打点。「それくらいの結果は出さないと使ってくれない。そんな時でしたけど、びっくりしましたねぇ。僕がびっくりというより、周りがびっくりしたでしょうね」。代走、守備要員からレギュラーへ。荒木氏の成長は練習の大事さを改めて証明するものにもなった。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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