中日31歳が胸に秘める“金言” 阪神戦力外で「いつ終わるか分からない」…崖っぷちで得た教訓

決勝打を放った代打・板山に残る阪神時代に授かった一言
■中日 2ー1 広島(11日・バンテリンドーム)
覚悟と準備が生んだ一打だった。中日は11日、バンテリンドームで行われた広島戦に2-1で勝利。7回2死満塁の好機で代打・板山祐太郎内野手が決勝打を放ち試合を決めた。この一打には井上一樹監督も「思いを汲んでくれたというか。(板山)祐太郎も嬉しかったと思いますが、僕も嬉しかったです」と笑顔がはじけた。
満を持して出番はやって来た。両軍先発が6回まで1失点に抑える接戦。同点で迎えた7回、中日は2死二、三塁の好機で1番・岡林勇希外野手が申告敬遠で歩かされて満塁に。代打を託された板山は初球を捉え、左前打を放った。チームの勝ち越しに本拠地は大歓声に包まれた。
準備はできていた。「もし二、三塁になったら、申告敬遠で代打ありそうだな」。板山の頭の中で描いた通りの展開だった。名前がコールされ、打席に立つと「自分から仕掛けないと勝負にならないし、勝てない」。覚悟を決めて初球を振り抜いた。周到なイメージで心の余裕が生まれただけでなく、この好結果には阪神時代の“助言”も背中を押していた。
「代打は前に飛ばしたら勝ちだ」
阪神時代、先輩だった狩野恵輔氏にもらった一言は今も心に残っている。当時は結果を残したいがあまり、自分の打てる球を待ちすぎていたが、経験を積んでいくに連れて先輩からの言葉がリアルになっていった。「1打席勝負は難しい。そういった割り切りが大事なんだと」。教わった覚悟が結果として表れた瞬間だった。
「いつ終わるか分からない」戦力外の経験を活かすために
2015年ドラフト6位で阪神に入団も、結果が残せず2023年オフに戦力外通告を受けた。その後、中日と育成契約し、昨年支配下登録を掴み取った。一度地獄を見ているからこそ、“目の前の1試合”にかける思いはさらに強くなった。
「いつ終わるか分からない経験をしているので……。だからこそ、朝起きて、試合が終わるまでいい準備をして、いい結果を求めてという事を積み重ねるだけです」
板山の覚悟は井上監督にも届いている。「戦力外になって、縁あってドラゴンズに来て。悔しい顔も、嬉しい顔も見てきた。最近は悔しい打席が続いたアイツを見ていて、次こそは、次こそはやってくれるだろうと思っていた。僕も嬉しかったです」。いつかやってくれる。そんな気持ちにさせる“姿勢”が指揮官の心に響いていた。
「全然まだ期待に応えられてない。やれる事を120%やるだけです」。どんなに嬉しくても満足することはない。次の日も、その次の日もまた、万全の準備をするだけだ。
(木村竜也 / Tatsuya Kimura)