「打席を考えられない」 “覚醒気配”の裏で…中日ドラ4捕手が抱えていた苦悩

石伊が適時打を放ち7月の打率は.381となった
■中日 7ー1 広島(12日・バンテリンドーム)
打てる捕手へ着々と“進化”する。中日は12日、バンテリンドームで行われた広島戦に7-1で勝利。「8番・捕手」でスタメン出場した石伊雄太捕手は、大野雄大投手をリードし完投勝利に貢献。3回には適時打を放つなど3打数1安打1打点2出塁と、攻守にわたって躍動した。石伊は試合後「欲が出てきたかな」と好調な打撃を振り返り、謙虚なルーキーの意識に変化が見えた。
打線に勢いがあった中日は初回から3点を先制。さらに2回にも1点を追加し、4点リードで迎えた3回、2死二塁の好機で石伊に打席が回ると、ファーストストライクを捉え左前打で5点目を挙げた。「ちょっとずつ余裕も出てきました」。そう試合前に語っていた通り、落ち着いて打席に入り、これ以上ない仕事をした。
昨秋、日本生命から即戦力捕手としてドラフト4位で指名されると、春季キャンプから早々に自慢の肩で猛アピール。勢いそのまま4月から1軍マスクを被ったが、捕手は扇の要。まずは守備を一人前にこなすことが最優先だった。「打席のことまで考えられる状態じゃありませんでした。ネクストでも次の打者のこと考えていたりしたので……」。5月が終わり、1軍ではまだ3安打しか打てずにいた。
それでも試合数を徐々に重ね、6月には20試合に出場。7月に入ると少しずつ余裕を感じるようになった。8日の巨人戦では待望のプロ初アーチを放ち、12日の試合を終えて7月の月間打率は.381まで上昇した。さらに得点圏打率を見れば、今季通して.444と勝負強さを発揮している。「コーチからの言葉も理解して、自分の引き出しの数を増やせていると思います」と着実に階段を上がっている感覚はある。
「バッティングはもう、守備の二の次に置いてるくらいなんですけど。最近、ちょっと結果が出て来てるので、ちょっと欲が出て来たかなと思います」。お立ち台に上がり、はにかんだ24歳。進化はまだ始まったばかりだ。
(木村竜也 / Tatsuya Kimura)