吉田正尚が明かす「頂」の意味 描いた夢に衝撃の結末「ゴールがありません」

吉田正尚が「頂」の言葉を大切にする理由
誰もが知らない未来に向かって、着実に進んでいく。レッドソックスの吉田正尚外野手は、座右の銘に「頂」という言葉を選んでいる。
「好きな言葉を聞かれた時、ふと考えたことがあるんですよね。ピンと来たんですよ、『頂』って良いなぁ……って。これは頂点に立つという意味じゃなくて『頂を目指す』という意味なんです。上だけを見て、必死に『頂を目指していく』という意味です。登っていく段階で、いろんな困難に遭遇する。それがまた、良いものなんだと思っています」
グラブの中にも「頂」の文字を刻んでいる。吉田は昨年10月に右肩を手術。今月9日(日本時間10日)に60日間の負傷者リスト(IL)からメジャー復帰を果たした。長いリハビリ生活を乗り越え、新しいスタートを切ったメジャー3年目のシーズン。15日で32歳になる。
「どんな時も、常に1番を目指しています。向上心がなくなったら、そこが自分の終着点なので。諦めたということです。誰に何を言われようとも、夢を持つこと、熱中することが大事。そこには悔しさや反骨心も少しは必要ですね」
決して恵まれた体格とは言えない。それでも、トップレベルの舞台で奮闘を続けてきた。「野球を始めた頃から、体はあまり大きくありませんでした。それでも、メジャーリーガーへの憧れは、ずっとありましたね。『あれだけ打球を飛ばせたら気持ち良いだろうな』そう思って、僕はバットを振り続けてきましたね」。野球に励む少年少女の手本でありたい。
「頂上に向かって、いろんな出会いのある旅が良いです。どれだけテッペンを目指しても、決してたどり着かないから良い。夢は、そう簡単に叶いません。『夢を掴む』って、言葉ではすぐに表現できますけれど、実現するのは難しい。楽をして前に進めたとしても、その瞬間は見栄えが良いだけで長続きはしない。運があるだけなので。ベースを作って継続しないと『自分の力』にはなりません」
異国でも懸命に生き抜く。「好きなものに夢中になること。何か1つだけでも良いんです。熱中できるものに全力で取り組みたい。『頂』にはゴールがありません。登り切ってしまうと人間、甘えてしまってダメになる。そこがゴールだと自分が決めた瞬間、その道は閉ざされるので、もう、前に進めない。だから『頂を目指す』なんです」。時に泥臭く、貪欲に――。一筋の光を目指して、歩を進める。
「そんなに……ね。人生、簡単じゃ面白くないでしょ?」
○真柴健(ましば・けん)1994年、大阪府・池田市生まれ。2017年に京産大を卒業後、日刊スポーツ新聞社へ入社。新卒から3年間の阪神担当を経て、2020年からオリックスを3年間担当。担当3年間で最下位、リーグ優勝、悲願の日本一を見届け、新聞記者を卒業。2023年からFull-Count編集部に。2025年からMLBも担当。米国では時差とも戦いながら、愛するオリックスをオンライン観戦中。
(真柴健 / Ken Mashiba)