手術を経て復活「次、ぶっ飛んだら辞める」 岩嵜翔が新天地で決めた覚悟

オリックス・岩崎翔【写真:小林靖】
オリックス・岩崎翔【写真:小林靖】

5月末に中日から金銭トレードで移籍

 オリックスの岩嵜翔投手が中継ぎとして存在感を示している。「僕の場合、30歳を過ぎて手術を受けたので、40歳まで(プレーが)できると前向きに捉えていますが、次、ぶっ飛んだら辞めればいい、という気持ちで毎日、試合に臨んでいます」。岩嵜が静かに口を開いた。

 岩嵜は、市船橋高(千葉)から2007年高校生ドラフト1位でソフトバンクに入団。3年目から頭角を現し、リリーフに専念した2017年には72試合に登板。最優秀中継ぎ賞に輝き、2年ぶり8度目の日本一に貢献した。FAに伴う人的補償で2022年から中日に移籍。トミー・ジョン(TJ)手術を経て、2025年4月1日の巨人戦(バンテリンドーム)で1413日ぶりの白星を挙げた。その後5月30日に、中継ぎ陣の補強が急務となったオリックスに金銭トレードで移籍し、主に勝ちパターンでの救援登板を任されている。

 覚悟を決めた理由もある。請われて移った中日とオリックスへの感謝の思いだ。「周りの方々に支えられて、今があります。チャンスを与えていただき感謝しかありません」。特に働き場所を与えるために移籍を決断してくれた中日・井上一樹監督には「『翔のために』とおっしゃってくださって。選手一人ひとりのことを考えて下さる方。その思いに応えないといけないと思っています」と感謝する。「急ではあるけれど、俺らと闘ってきた翔が、トレードでオリックスに行くことになりました。違うチームに行ったとしても、絆というか今まで作ってきたもの、築き上げてきたものは変わらない」。ロッカーで岩嵜を横に呼び寄せ、選手に呼び掛けてくれた井上監督に、そのシーンを含め、当日の密着映像を約15分も公式YouTubeで流してくれた中日球団。「うれしかったですね。あそこまでしてくれて、ほんと感謝です」と繰り返す。

 移籍直後の交流戦で、いきなり中日とバンテリンドームで対戦した。挨拶に出向いた井上監督からは「すごいチャンスだと思うんで頑張れよ」と激励を受けたという。3人を見逃し三振、右飛、空振り三振で仕留め“恩返し”は果たすことはできた。「やるか、やられるかの世界。自分もどんどん勝ち取っていかなければいけないポジションなんで、目の前の打者に集中していました」と、岩嵜には特別な感情はなかったそうだ。

 投球の幅も広げた。登板7試合目の6月28日の楽天戦(京セラドーム)から、ナックルカーブを使うようになった。中島大輔外野手に5球連続ストレートを投じた後、カウント2-2からナックルカーブで遊ゴロに仕留めた。7月4日のロッテ戦(ほっともっと神戸)では、2死一塁から藤原尚憲内野手をこのボールで見逃し三振に。

「元々、持ち球だったんですが、ストレートとフォークだけの待ち方をされることが増えてきたので、ほかに1球あれば違うかなという思いで投げています。ファウルで粘られた時にもちょっと崩せるかなと思います」と岩嵜。

 入団会見で掲げた目標は「50試合登板と優勝に貢献すること」。1軍登録された6月7日からチーム30試合のうち、12試合に登板。中継ぎ陣に疲れが見えていたオリックスにとって、まさに救世主だ。後半戦も覚悟を決めてマウンドに登る。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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