NPB行きは「落ち目じゃない」 ネビンが捨てた“米国式”…成功もたらした意外な金言

西武のタイラー・ネビン【写真:小林靖】
西武のタイラー・ネビン【写真:小林靖】

過去4年は「メジャーとマイナーを行ったり来たり」

 今年の西武の外国人選手は“大当たり”だ。来日1年目のタイラー・ネビン外野手は、開幕後の3・4月こそ打率.253、1本塁打にとどまっていたが、5月に月間MVP(打率.292、4本塁打)を獲得する活躍を演じると、その後の月間打率は6月が.311、7月が.338とうなぎ上り。4月25日以降チームの4番に定着しており、今季打率.295、11本塁打、46打点は全てチームトップ(8月7日現在)。押しも押されもせぬ主軸に収まった強力助っ人に、成功の秘訣を聞いた。

 6月23日には早くも活躍を評価され、来季から2年間の契約延長も発表された。「僕は過去4年間で、オリオールズ、タイガース、アスレチックスと3チームを渡り歩き、メジャーとマイナーを行ったり来たりもした。だから、ライオンズでもう2年間、安定したシーズンを送る保証をしていただいたことは、とても嬉しい。凄くいい契約だと思っているよ」と感慨深げだ。

 シーズン途中の7月中旬には、昨年アスレチックスで同僚だったJ.D.デービス内野手が西武入り。「ネビンとの関係が(入団の)決め手のひとつでした。彼から日本という国のホスピタリティー(おもてなしの心)、食事、街の様子などを聞いていました」と語っている。

 これに対しネビンは「僕よりメジャー経験が豊富だし、人間としても素晴らしい」と4歳上のデービスに敬意を表す。その上で、「単純に日本で野球ができるのはすごくいい機会だよ、と勧めた。メジャーリーグから日本に来ることになった選手に中には『自分は落ち目だ』と感じる人もいるけれど、日本で活躍する可能性を見出されたからこそオファーがあったのだと思うし、そう考えてプレーしてほしいと伝えたよ」と明かす。

 いまやネビンとデービスは常時スタメンに名を連ね、4番ネビン、5番デービスと並んだこともある。守ってもネビンが一塁、デービスが三塁を就くことが多く、今後はますます、助っ人コンビの出来がチームの浮沈に大きく関わってきそうだ。

チームメートを鼓舞するパフォーマンス「自然に出るもの」

 1年目から日本野球へ見事に順応しているネビンだが、初来日当初は当然不安もあった。それを和らげてくれたのが、“同名”のDeNAタイラー・オースティン内野手の存在だったという。ネビンの父・フィル氏がヤンキースでコーチを務めていた時に、オースティンも在籍していた縁で連絡を取り合うようになり、今年3月23日にベルーナドームで行われたオープン戦で対面した際、アドバイスを受けた。

「今でも印象に残っているのは『アメリカでのやり方に固執するな』という言葉。『自分はアメリカでこうやってきたのに……』と考えるのではなく、日本にいる以上、ここの野球に適応するために何ができるのかを、練習でも試合でも考えるべきだと言ってもらった」とネビン。今季が来日6年目で、昨季セ・リーグ首位打者に輝いたオースティンの言葉は、含蓄に富んでいたようだ。

 3・4月はやや苦労したが、5月以降は成績を上げてきたネビン。「4月までは初対戦の投手がほとんどだったけれど、対戦が増えて情報が蓄積され、相手がどんなタイプの投手で、どんな感じの配球で来るのかがわかってきたことが大きいと思う」とうなずく。

 5月24日のロッテ戦から導入した“魚雷(トルピード)バット”も見事にハマった。ネビンにはもともと、内角のストレート系に詰まらされながら、内野と外野の間にしぶとく落としてヒットにする技術があった。バットの先端が細くなっていて、芯がグリップ側に寄っている魚雷バットを使い始めると、詰まらされたと思った打球に飛距離が出るようになった。

「それまで外野のフェンスを越えなかった打球、外野手の頭を越えなかった打球が、越えていくようになった。(7月5日のソフトバンク戦で)みずほPayPayドームの右翼席に運んだ7号ソロ、(7月14日の日本ハム戦で)東京ドームの右翼フェンスをギリギリ越えた9号ソロは、普通のバットであれば本塁打になっていなかったと思う」と“魚雷効果”を実感している。

 劣勢の試合で反撃ののろしを上げるヒットを放った時、あるいは一塁守備でチームの危機を救うファインプレーを見せた時、ネビンは大きなアクションとともに雄叫びを上げ、仲間たちを鼓舞する。「意図的にやっているというより、いいプレーができた時に自然に出るものだよ」と笑うが、チームを推進する原動力になりつつある。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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