不安に駆られた日本行き…払拭した父の助言 直面したMLBとの“違い”「面白い経験」

西武のタイラー・ネビン【写真:小林靖】
西武のタイラー・ネビン【写真:小林靖】

父も日米大学野球、MLBオールスターチームで来日経験あり

 来日1年目にして西武の4番に定着し、打線をけん引しているタイラー・ネビン外野手。父のフィル・ネビン氏は前エンゼルス監督で、大谷翔平投手が所属した2022年に監督代行、翌2023年には正式な監督として指揮を執った。ネビン自身も入団決定当初は、まず“大谷の元ボスの長男”としてファンに認知された経緯がある。

 打率.292、11本塁打46打点(9日時点)。ネビンが打撃3部門で挙げている数字は、いずれもチームトップに立っている。

 父のフィル氏は現役時代にパドレスなどで強打を誇り、メジャー通算1217試合出場、208本塁打743打点、打率.270をマークした。大学時代に日米大学野球選手権大会、パドレス時代の2000年にはMLBオールスターチームの一員として日米野球で来日しており、日本と縁があった。ジャイアンツ、ヤンキース、エンゼルスでコーチを務めた後、エンゼルスの指揮官の座に就いた。今年3月には、息子のネビンが日本デビューを飾ったベルーナドームでの開幕3連戦(対日本ハム)を観戦するために来日していた。

 ネビンは「父が元メジャーリーガーで良かったと思うのは、いろいろなアドバイスをもらえること。技術よりメンタル面で助けられている。父はプレーヤー、コーチ両方の経験があり、両方の考え方ができて、視野が広いところがありがたい」と感謝している。

「西武と契約を交わし、2月の春季キャンプに参加してからも、正直に言うと、日本に来ることが自分にとって本当にいい決断だったのかと、不安になることがあった。そういう時に父から『メジャーのキャンプが今どうなっているのかや、メジャーにいる友だちがどうしているかなどを意識し過ぎず、日本での自分のキャンプに集中するように』とアドバイスをもらった」と振り返る。

 父のフィル氏もサンディエゴの自宅で動画配信サイトを通し、西武での息子のプレーを毎試合のようにチェックしているという。

2022、2023年には父が指揮を執り大谷が在籍したエンゼルスと対戦

 フィル氏がエンゼルスの指揮を執った2年間、ネビンは2022年にオリオールズ、2023年にはタイガースに在籍し、“親子対決”を実現させた。投手・大谷と対戦することはなかったが、「大谷は言うまでもなく凄く怖い打者で、塁に出れば足もある。当時から素晴らしい選手だったね」と印象を語る。

 日本では同い年の妻エミリーさんと2人暮らし。「彼女と出会ったのはお互い8歳の時だった。長い関係だね」と照れくさそうに明かす。同じ小、中学校に通った幼なじみで、高校は別だったが、ネビンがMLBドラフトでロッキーズから指名され入団した後、交際をスタートさせた。「僕はプロ野球選手になり、彼女は大学に進学したから、しばらくは遠距離恋愛が続いた」。2年前に結婚にこぎつけたというから、まるで小説か漫画のようにロマンチックなストーリーだ。

 6月下旬には早くも活躍ぶりを評価され、西武と来季から2年間の契約延長を発表した。「4月末の段階で打率が2割5分台にとどまっていた時にも、ライオンズファンが熱心に声援を送ってくれたことは本当にありがたかった。妻も日本が好きだと言っているよ」と居心地が良さそうだ。

 日本に来て一番びっくりしたことを聞くと、「ビジターゲームの時に、宿舎ホテルでユニホームに着替え、ホテル内をユニホーム姿で歩き、そのままバスに乗って球場へ向かうことだね」という答えが返ってきた。MLBではビジターでも私服で球場入りするのが一般的なのだ。

「米国でも大学生のチームはそういうことをしているらしいけれど、僕は大学に行っていない。日本で面白い経験をさせてもらっているよ」と笑う。異国での生活の中で、様々なチャレンジを楽しんでいる。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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