大谷らド軍乱獲で物議も…元代理人が擁護「制限は悪い」 “球界平等”がもたらす弊害

ゴールディンCEO…未来の野球少年が「大金を稼ぐことや家族を養うことを夢見る」
“球界の平等化”に警鐘を鳴らした――。昨年9月19日(日本時間20日)ドジャース・大谷翔平投手がMLB史上初となる50-50を達成した。50号ボールは米オークション会社の「Goldin」社によって販売された。同社のケン・ゴールディンCEOはジェイソン・ワース(元フィリーズ)やカル・リプケンJr.(元オリオールズ)をかつて顧客に抱えた元代理人。さまざまな議論の声に言及した。
2023年オフにドジャースが大谷と7億ドル(約991億円)で契約、今月6日(同7日)にはブルージェイズがブラディミール・ゲレーロJr.内野手と14年5億ドル(約708億円)で契約延長を発表した。ゴールディンCEOは球界のバブル化を懸念しているかという質問に対して「ノー」と即答。「(野球界は)すべて自由市場で動いています。例えば、オオタニ、ドジャース、そしてすべての球界関係者は(大谷を獲得するには)いくらしか使えませんと、指図されたくないはずです」と、代弁した。
米データサイト「コッツ・ベースボールコントラクツ」によると、今季のドジャース総年俸は30球団中、断トツの約3億3130万ドル(約444億円)。1強状態にサラリーキャップ制度の導入を期待する声も上がっている。「(サラリーキャップなどの制限があることで)自分の価値を下回る契約しか得られない可能性があるのです。自由市場を金額によって制限する方法はとても悪いことだと思います。また、オーナーは全員、億万長者です。だから強制的に選手の給料を制限すべきではありません」と、見解を述べた。
続けてゴールディン氏は「例えば、私の息子は本格的な野球をしているのですが、チームメートの大半はドミニカ共和国系米国人です。11歳の彼らはフアン・ソトの契約(15年7億6500万ドル=約1083億円)をみて、大金を稼ぐことや家族を養うことを夢見るわけです」と、コメント。巨額契約が未来の選手のモチベーションに繋がっていると指摘した。「そういう活躍ができるのなら、サラリーキャップを設けるべきではないです。映画俳優のトム・クルーズ(にサラリーキャップ)はないですよね。(ルールではなく)市場が評価すればいいのです」と、結論づけた。
ジャッジ62号球で物議も反論…自由市場をやめれば「逆戻りしてしまうかも」
また“球界のビジネス一辺倒”の姿勢に対し、一部ではゴールディン氏の手掛けるスポーツオークションにも疑問が投げかけられたのも事実だ。ヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手が2022年にア・リーグ新記録となるシーズン62本を達成したが、そのホームランボールをジャッジが自身の手元に戻ることを希望したが叶わず、ゴールディン社経由で150万ドル(約2億1200万円)で落札された。
この指摘に対して、ゴールディン氏は「例えば、サイングッズを無料にしてしまうと(自由市場という概念が崩れ、球界の収入が減り)ウィリー・メイズが年俸10万ドル(約1400万円)でプレーしていた時代に逆戻りしてしまうかもしれません」と、反論した。
ゴールディン氏は続けて「『誰か(ジャッジ)』が300万ドル(約4億2500万円)で購入すると手を上げましたが、実際にはそうならず、私たちの元で出品され150万ドル(約2億1200万円)落札しました」とコメントし、適正価格で取引されるのも“自然の摂理”だと主張した。
今シーズン総年俸が2億ドル(約283億円)を超える球団は10と、MLBは確実に成長を遂げている。貧乏球団のファンにとっては広がる格差に不満を持ち、サラリーキャップの導入を求めることは当然理解できる。しかし、ゴールディン氏の主張を借りるなら、“人工的に作られた平等”となれば各個人の収入に影響することは間違いない。適正報酬を得られないことが“正しい”かは各個人の意見に分かれるだろうが、今一度考えてもいいのかもしれない。
(増井貴志/Takashi Masui)