阪神の代役4番が存在感、専門家も期待「チーム力が上がる」 2年ぶりVへ加速

阪神・前川右京【写真:小林靖】
阪神・前川右京【写真:小林靖】

前川右京、「4番・左翼」で先制打含む2安打

■広島 9ー2 阪神(12日・マツダスタジアム)

 若きスラッガーが復調気配だ。阪神・前川右京外野手は12日、マツダスタジアムで行われた広島戦に「4番・左翼」で先発出場。3回に投手強襲の先制打を放つなど2安打し、プロ入り後初めて座った4番で存在感を示した。現役時代に日本ハム、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「いい時のスイングに戻ってきている」と分析。今後の活躍にも期待を寄せた。

 佐藤輝明内野手がスタメンを外れ、阪神111代の4番に入った高卒4年目の22歳。野口氏は「4番どうこうは関係ない。また明日(13日)には佐藤が戻ってきて4番じゃなくなるわけだし、打順は気にしなくていい」と打順の話題には関心を示さなかったが「いい結果が出たのは良かった。しっかりと捉えられていました」と打撃内容を評価した。

 左対左も苦にしない。床田寛樹投手に対して、初回2死二塁で迎えた第1打席は二ゴロに倒れたものの、外寄りのカットボールをしっかり捉えていた。0-0で迎えた3回2死一、三塁ではカウント2-1からのツーシームを投手強襲の内野安打。3番・森下翔太外野手が空振り三振に倒れて漂った嫌な雰囲気を振り払う、強烈な先制打だった。

 智弁学園から2021年ドラフト4位で入団。2年目の2023年に33試合に出ると、昨年は116試合に出場して打率.269をマークするなどブレークした。今季はレギュラー定着が期待されたが、打率2割台前半で0本塁打と打撃不振。5月と7月に2軍落ちを経験し、1軍に再昇格した9日のヤクルト戦(京セラドーム大阪)は代打で中飛だった。

 11日に予定されていた広島戦(マツダスタジアム)は雨天中止。復帰2戦目で代役とはいえ抜擢された4番で、5回にも三塁線を襲う内野安打を放ちマルチ安打を記録した。高校時代に沸かせた夏の甲子園の時期に復調を強くアピールした。

ツイスト打法…不振の時は「軸がブレていた」

 インパクトの瞬間、投手とは逆方向に腰を回転させるイメージで打つツイスト打法の前川。野口氏は「どんな選手でもちょっとしたことで崩れてしまうことがある」とした上で、前川の調子が上がらなかった時期は「軸が保てず、ブレていました。だから詰まったり、タイミングが外れて打ち損じていたんです」と解説する。それがこの試合は「いい時に戻ってきていると感じました」という。

 首位を独走する阪神は近本光司外野手、中野拓夢内野手、森下、佐藤輝、大山悠輔内野手と並ぶ1~5番はほぼ固定されている。「『6番・左翼』に苦しんでいる部分があります。その部分を他の選手を含めて高め合っていけると、さらに充実してきます」と野口氏。開幕戦で「6番・左翼」を任された前川が再びそこにはまれば、打線に隙がなくなってくる。

 この試合は投手陣が崩れて逆転負け。マジックは28で足踏みしたものの、若き強打者の復調は大きな意味を持つ。「前川がアピールしてくれると、レフトの競争がいい刺激となってチーム力が上がっていきます。今後はいい時の打撃が期待できると思いますし、不安定な部分が埋まっていきますね」。待っていた“最後のピース”がはまり、消えていく死角。2年ぶり優勝へ、さらに加速していきそうだ。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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