中村奨成がたどり着いた「生きる道」 8年目で覚醒気配…専門家が見た“きっかけ”

広島・中村奨成【写真:小林靖】
広島・中村奨成【写真:小林靖】

広島・中村奨成、天敵の阪神・大竹攻略の口火

■広島 9ー2 阪神(12日・マツダスタジアム)

 8年目のドラ1がついに覚醒だ。広島・中村奨成外野手は12日、マツダスタジアムで行われた阪神戦に「1番・中堅」で先発出場。3回に中前打を放つなど3安打し、9-2の逆転勝利に大きく貢献した。現役時代に日本ハム、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「非常にいい内容の打撃だった」と解説。進むべき道に「たどり着いた」と評した。

 まずは2点を追う3回1死。大竹耕太郎投手の直球を詰まりながら中前に運んだ。「いろんな球種を駆使してくる大竹に対して、最初の打席はチェンジアップで空振り三振でした。(3回の)2打席目は変化球をマークしながら、詰まってもいいという感じで、右方向を意識した凄くいい打撃をしました」。この一打が口火となり、エレフリス・モンテロ内野手の逆転3ランを呼び込み、この回4点を奪った。

 続く5回先頭で迎えた第3打席は、フルカウントからの外角直球を右前打。「追い込まれていたこともあって、右方向にしか打ちませんという意識が伝わってくる打撃。非常に素晴らしかったです」。この回もしぶとい打撃で3点を加える口火を切ったのである。試合前まで大竹には今季4戦4敗。通算でも1勝13敗と顔も見たくないほどの天敵だったが、リードオフマンが突破口を開いて5回途中でKOと見事に攻略してみせた。

 これで終わらない。8回1死一、二塁では桐敷拓馬投手のスライダーを右前打。好機を拡大して2点追加につなげた。今季4度目の3安打。打率を.263まで上げ、チームも4位浮上だ。3位のDeNAに1ゲーム差と迫り、CS圏内に肉薄した。

広陵3年時の夏の甲子園で6本塁打し一躍脚光

 2017年、準優勝した広陵3年時の夏の甲子園では6本塁打をマーク。PL学園・清原和博(西武-巨人-オリックス)の5本の記録を更新して一躍甲子園のスーパーヒーローとなった。同年ドラフトでは1位競合の末に広島入団。強打の捕手として飛躍を期待されていた。

 だがプロ入り後は怪我もあって伸び悩み、1軍初出場は3年目の2020年。2021年にプロ初本塁打を記録したが、2022年からの3年間は打率1割台で本塁打ゼロと低迷し、背番号は昨年、22から96に変更された。今季も開幕は2軍。だが4月に1軍昇格すると5月には4年ぶりの本塁打をマークするなど、徐々に存在感を発揮し始めた。

「元々、甲子園のホームランで騒がれた選手。ホームランの快感はなかなか忘れられないものです。去年まではどういう感じで生きていくか見えていなかったのではないでしょうか」と野口氏は言う。伸び悩む中で「スタイルを模索している中で、捕手から外野手にコンバートされた。打順は1、2番や下位。プロの世界でどう生きていくか、やっと見えてきたのではないかと思います」と推測した。

 自身が輝きを放った夏の甲子園の時期。「凄くいい結果を出しました。ようやく自分の生きる道にたどり着いたんじゃないでしょうか。これを継続できれば、安定した成績が残せると思います」。大フィーバーから8年。逆転でのCS進出へのキーマンとして、再びそのバットに注目が集まろうとしている。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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