世界大会で思わぬバズり 松尾汐恩が忘れなかった“和の文化”「無意識に」

大会打率.321、6打点に盗塁阻止もありベストナインを獲得
9月5~24日の期間、沖縄を舞台に「ラグザス presents 第32回 WBSC U-18 野球ワールドカップ」(以下、U-18W杯)が開催される。1981年から始まり、今年で32回目を数える歴史ある大会。Full-Countでは、2015年の大阪以来2度目となる日本開催を盛り上げるべく、かつて同大会に出場したNPB選手たちに“あの夏”の記憶を呼び覚ましてもらった。
今回登場するのは、2022年の第30回大会に出場したDeNA・松尾汐恩捕手だ。本来であれば2021年の開催予定だったが、未曾有のコロナ禍により1年延期。強打の捕手として大阪桐蔭をリードした松尾は、思わぬ巡り合わせでU-18W杯に出場することになった。
3年春の選抜で全国制覇。夏の甲子園は準々決勝で敗退したが、押しも押されもせぬ世代を代表する捕手として、世界の舞台に挑んだ。幼少期から憧れ、高校入学後は目標に定めていた日の丸に「いろいろな高校生の代表として行かせてもらえることに感謝が溢れました」と気を引き締めた。
大会では打率.321(28打数9安打)、6打点に盗塁阻止も決めて、ベストナインを獲得した。「最初はなかなか自分のスイングができなかったですが、練習からフルスイングで強く振ることを意識して、段々慣れてきたと思います」と、木製バットにもしっかりと対応した。
印象的な試合には、最終戦となった3位決定戦・韓国戦を挙げる。スーパーラウンド初戦は0-8で敗れていただけに「1回負けていてチームとしてもピリついた空気もあって、どうにかメダルを持って帰ろうと思ってやりました」。6-2で勝利し、3位で大会を終えた。
米国滞在中はコロナ禍で外出できず「ホテルのプールに行ったり」
大会中には、思わぬ“バズり”もあった。大会を主催する世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が公式ツイッター(現X)に、松尾が打席に入る際にヘルメットのつばに手を当て会釈し、相手捕手と球審に挨拶する姿を投稿。「審判、対戦相手、試合をリスペクトしている」と称えたのだ。
日本の高校野球では“通例”とあって、松尾自身は「あの時はスマホを持っていたけど電波が悪すぎて。あと、あまりニュースって見ないんですよ。だから何とも……。高校の時からそういう教えだったので無意識にやっていましたね。普通のこと、という感じでした」とピンときていなかったが、野球以外でも名前が知れ渡った一幕だった。
現在、チームではトレバー・バウアー投手に信頼され、タイラー・オースティン内野手とも大の仲良しになるなど、持ち前の“コミュ力”を生かして外国人選手から愛されている。その片鱗は、高校時代からあったようだ。
「コロナもあってなかなか外出ができなかったんです。日々過ごすホテルにプールとかあったので、仲のいい子と行ったりしていました。韓国代表も一緒のところに泊まっていたので喋ったりして。あまり喋れないですけど仲良くなって、インスタグラムを何人か交換して相互フォローしたりしましたね」
海外の投手と対峙し、球速や球質、軌道の違いに驚いたことは多かったという。それでも「慣れない環境の中で過ごす生活面、そこで得られた野球観もありました。監督が代われば野球も変わるので、学べた部分もありました。力では及ばなくてもコツコツできるチームが勝てるんだと感じさせてもらいましたし、大阪桐蔭高時代は経験していなかった野球でした」。18歳で過ごした貴重な時間は、ドラフト1位で進んだプロの世界でも基盤となっている。
(Full-Count編集部)