オリ中継ぎ陣に浸透する比嘉投手コーチの“教え” 11年前から忘れぬ言葉「体は動くよ」

比嘉幹貴投手コーチが大切にする元オリ指揮官・森脇監督の言葉
オリックスの比嘉幹貴投手コーチが、フル回転する中継ぎ陣に「体は疲れても、心は疲れさせるな」というブルペンの“心得”を、後輩投手たちに伝授している。
「ナイトゲームの翌日のデーゲームって疲れるじゃないですか。コーチでも疲れるのに、選手だともっと疲れるんです。それで『うーん』っていう顔をしていたら体も動かなくなってしまいます。だから、空元気でも声を出していれば、元気になって体が動くんです。僕もそうしてきました」。比嘉コーチが、中継ぎの極意を明かした。
1軍投手コーチに就任して1年目。昨年まで、選手としてブルペンを支えてきた比嘉コーチが、この言葉を聞いたのは11年前のことだった。
コザ高(沖縄)、国際武道大、日立製作所を経てドラフト2位でオリックス入りした比嘉コーチが迎えた5年目のシーズン。2014年のペナントレース、チームは2位ながら優勝マジックが点灯し、10月2日、首位・ソフトバンクとの直接対決を迎えた。敵地での延長10回、比嘉コーチはサヨナラ打を許し、歓喜のソフトバンク選手を眺めるしかなかった。この年、62試合に登板し20ホールドを挙げる大車輪の活躍ぶりだった。
「森脇(浩司)監督に声を掛けていただいたと思います。あの頃は、3連投、4連投とかがあったので、『体が疲れているのは分かるけど、元気でいような。そしたら体は動くよ』ということを言っていただいたんです。本当にその通りだなと思いました」と振り返る。
比嘉コーチの教えを実践している投手もいる。「ブルペンで誰かが言っていたのを聞いて、本当にそうだなと。僕は、『よっしゃー、やってやるぞ』という気持ちになると、疲れていても体が軽くなり、今日もいけるぞ、というタイプなんです」とドラフト6位の新人右腕・片山楽生投手は語る。
比嘉コーチの言葉を聞いてから、気持ちをリフレッシュするように心掛け、休日には同期入団の麦谷祐介外野手や寺西成騎投手らと食事に出かけ、英気を養っているという。
優勝争いを繰り広げるチームに欠かせない、中継ぎ陣の奮起。勝負を分けるのは、戦いに挑む強い気持ちだ。
◯北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)