五輪の“戦犯”でも「お前の勝ち」 亡くなる10日前…GG佐藤が恩師から受けた最後の言葉

西武、ロッテなどで活躍したGG佐藤氏【写真:湯浅大】
西武、ロッテなどで活躍したGG佐藤氏【写真:湯浅大】

GG佐藤氏が「Full-Count LABー探求のカケラー」で野村克也さんを語った

 西武などで活躍したGG佐藤(本名・佐藤隆彦)氏は、2008年に北京五輪で2つの落球を含む3失策を犯し、「世紀の落球」として日本のメダル逃しの戦犯扱いされた。バッシングに心を痛め、“十字架”を背負い続けていた同氏がこの件を笑顔で語れるようになったのは、ほんの数年前。心の師と仰ぐ野村克也さん(2020年2月に死去)との最後の言葉がきっかけだった。ポッドキャスト番組「Full-Count LABー探求のカケラー」で心中を明かした。

「ずっと、このエラーをした自分を許すことができなかったんです。ずっと責め続けてきたし、エラーに対して蓋をしてきたんです。もう触れちゃいけないものみたいな」

「世紀の落球」から12年後、テレビ番組の企画で野村氏と再会した。佐藤氏は中学時代に野村さんの妻、沙知代さん(2017年に死去)がオーナーだった硬式チーム「港東ムース」に所属していた縁で野村さんとは面識があったのだ。

「おい、GGよ。お前は確かに北京五輪でエラーをした。でも、そのオリンピックで人の記憶に残っているのは誰だ? 監督の星野(仙一)とお前だけだ。人の記憶に残ることがどれだけ大変で素晴らしいことがわかるか。お前の勝ちだ。お前は勝利者だ」

 抱え続けてきた“呪縛”が一瞬で解けた気がした。「その言葉で未来が開けたというか、扉が開きました。パカーンと。ノムさん、本当すげえなと思いました。あれをお前の勝ちだ、勝利者だって見られる解釈、見方はすごいなと思った」。そこから“失敗活動家”として「エラーをした経験をどんどん発信して、SNSを始めたり講演活動もやるきっかけとなりました」。

 講演では失敗から得たこと、失敗の人生に成功もないと伝えている。「事実は一つ、解釈は無数。解釈は自分で選ぶことができるというメッセージはいつも送っています」。貴重な言葉を受け取ってからわずか10日後、野村氏は天国へと旅立った。ラストメッセージの重みは計り知れない。 

 12年間、自分の中に閉じ込めていた経験が、今では多くの人に勇気を与える源泉となっている。野村氏から受け取った最後の“贈り物”は、確実に次の世代へと受け継がれている。「港東ムース」卒団の際に渡された「念ずれば花ひらく」と直筆で書かれた色紙は、今でも自宅に飾っている。

【実際の音声】「失敗がない人生には成功もない」 GG佐藤を救った野村克也さんの言葉

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