まさかの停電→中継もストップ「こんなこと初めて」 西武球団スタッフも仰天、驚きの舞台裏

マウンドに集まる西武ナイン【写真:小池義弘】
マウンドに集まる西武ナイン【写真:小池義弘】

試合後のヒーローインタビュー、恒例のフィールドウォークも取りやめ

■西武 3-2 日本ハム(27日・ベルーナドーム)

「この球場で、こんなことは初めてですよ」。1983年に投手として入団以来、球団勤続43年目を迎えている後藤明美1軍用具担当チーフも目を丸くしていた。

 西武は27日、本拠地ベルーナドームで行われた日本ハム戦に3-2で勝利したが、9回に球場内で停電が発生。突然、ビジョンの映像やベンチ内の照明などが消え、テレビ中継やネット配信もストップする前代未聞のハプニングに見舞われた。

 西武は1点リードで9回の守備に就き、マウンドには守護神・平良海馬投手が上がった。この回の先頭・田宮裕涼捕手に対する初球がボールと判定された直後のことだった。大型ビジョンの映像が消え、両チームのベンチ、ネット裏のVIP席、記者席などの明かりやエアコンもダウン。場内放送もできなくなり、どよめくスタンド。全国のファンが見守っていたテレビ中継、ネット配信もストップしてしまった。

 球団によると、同日時点で原因は不明。フィールドを照らすLED照明は健在だったため、試合は約4分間の中断後、ビジョンが真っ暗なまま再開された。平良は2死から松本剛外野手に中前打を浴びたものの後続を断ち、勝利をものにした。テレビ中継、ネット配信は再開されずじまいで、球場でのヒーローインタビュー、試合後に観客がグラウンドへ降りることができる恒例の“フィールドウォーク”も取りやめとなった。

 西口文也監督は「(アウトカウントやボールカウントは)審判が言ってくれていましたし、ベンチからもアウトカウントとか、バッターは誰だとか、声を出していました」と明かしつつ、「(選手たちは)動揺なんて、あれくらいじゃ、しないです。もっと早い回だったら、いろいろちょっと困ることがあったかもしれませんが、最後の1イニングだったのでね」と気丈に振り返った。

西武-日本ハム戦で停電となるアクシデントが発生【写真:小池義弘】
西武-日本ハム戦で停電となるアクシデントが発生【写真:小池義弘】

西口監督は「大したことはない」と多くを語らなかった

 そもそもこの試合は、序盤から普段と違うムードが漂っていた。前半に何度かストロボを焚いたような閃光がきらめき、雷鳴が轟いていた。

 さらに1点リードの8回の守備。4番手の山田陽翔投手は2死を取りながらも一、二塁に走者を背負い、代打・野村佑希内野手のカウントは1-2。この緊迫感高まる場面で、ショートの源田壮亮内野手が突然ベンチ裏へ下がった。場内アナウンスでは「手当のため」と説明されたが、西武ベンチ内では笑いも漏れていた。

 ここでも試合は3分ほど止まったが、源田は何事もなかったように戻ってきた。くしくも試合再開後、野村は最初の球を打ち、打球はゴロとなって源田の前に飛んだ(遊ゴロ)。西武サイドから「トイレではないですか?」との声も上がったが、西口監督は試合後「(場内アナウンスで)“手当”って言ってたでしょ? 大したことはないってことで、それで大丈夫です」と多くを語らなかった。

 スタンドには2万7141人の観客が詰めかけ、ビジョンに「完売御礼」の文字が映し出された試合でもあった。思わぬハプニングが続いたが、リーグ5位の西武が首位争いを展開中の日本ハムに競り勝った。相手に2点を先行されたものの、打撃不振でプロ初の9番で起用されたドラフト2位・渡部聖弥外野手が3回に同点2ラン、4回には長谷川信哉外野手の適時打で勝ち越した。

「聖弥自身もこれでちょっと乗っていってくれたらなと思います」と西口監督。CS進出圏内の3位・オリックスとは5.5ゲーム差。厳しい状況にある西武だが、ハプニング続きだった試合がパ・リーグに“嵐を呼ぶ”きっかけとなるか……。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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