失意の椋木蓮を救った“同期の絆” 1軍ベンチで呆然…寄り添った渡部遼人「ずっと頑張っている」

オリックス・椋木蓮【写真:北野正樹】
オリックス・椋木蓮【写真:北野正樹】

オリックス椋木を“独り”にはしなかった渡部遼人の思い

 失意の底に沈むオリックス・椋木蓮投手を、渡部遼人外野手の“同期愛”が救った。「試合前から、やっと同期がそろったみたいな感じで『同期やから頑張ろう』と言ってくれていて。遼人は、すごく同期愛が強いんです」。2軍で調整中の椋木が、感謝の思いを口にした。

 4年目の今季、開幕1軍は逃したが、4カード目の初戦(4月8日・ソフトバンク戦)で先発し、5回を77球、被安打6、自責点1で試合をつくった。しかし、4試合目の楽天戦(5月4日)で4番手として登板し、2回を被安打9、自責点7の乱調で翌日に1軍選手登録を抹消された。

 ファームで約3か月。中継ぎで起用されることもあったが、先発としてマウンドに立ち続け、11点台だった防御率を2.64まで下げて8月3日、再昇格を果たした。その日の日本ハム戦で先発し、初回をストレート5球で三者凡退に仕留め、2回は3者連続三振と、見事な立ち上がりをみせた。

 ところが、3回に先頭の水谷瞬外野手に中堅フェンス直撃の二塁打を許しピンチを招くと、4安打を集められ3失点。4回には野村佑希内野手に本塁打を浴び、この回1死を取っただけで、被安打8、自責点7で降板した。

「先発で過ごした2か月でやっと結果も出て、今まで以上にすごく気持ちが入り、やるぞという試合でした」と椋木。それだけに受けたショックは大きかった。チームは0‐9で敗戦。試合後は最後までベンチで座り込み動けなかった。そんな椋木を見守っていた渡部が、ロッカーに戻ろうと手を差し伸べた。2021年のドラフト同期生。東北福祉大から1位入団の椋木と、慶大から4位で入団した渡部。2人の間に言葉は不要だったようだ。

「家や車の中でも反省はできるのですが、やっぱり1番はベンチだなと思って、何がダメだったんだろうかと投球を振り返っていました」。そんな椋木に手を差し伸べたときの心境を、渡部は「僕も下(2軍)にいて、ずっと頑張っているのは知っていましたし、なんとか活躍してほしいというのはありました。僕らの同期は、1軍にはいても、(レギュラーを獲得するほどの)結果が出ていません。全員、悔しい思いを持っていますし、そういう気持ちを僕も持っているので、声を掛けたんだと思います」と振り返った。

 同期入団10人のうち、育成選手の2人はチームを去り、この試合時点で1軍に登録されていたのは、椋木、渡部と3位の福永奨捕手、育成3位の大里昂生内野手の4人だけ。1年目に2勝を挙げるも、その年にトミー・ジョン手術(TJ)を受けた椋木の完全復活にかける思いを知るだけに、渡部は右腕を独りにはできなかったのだ。

 2軍で鍛錬を重ねる椋木はスライダーの修正に注力している。「僕のスライダーはカーブ系のスラーブ。真っ直ぐは通用しているのですが、変化球がダメだから真っ直ぐに絞られているという部分がありました。今は曲がり幅が少なくなってもいいので、キレのあるスライダーを練習しています」と話す。

 明確になった課題を克服すべく、毎日のようにブルペンでの映像を見直し腕を振る。苦楽を共にする同期の思いに応えるためにも。

◯北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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