4年で広島戦力外…鈴木誠也の“叱咤”も「変われなかった」 TV局勤務の25歳が野球を続ける意味

元広島で信越野球クラブの永井敦士【写真:町田利衣】
元広島で信越野球クラブの永井敦士【写真:町田利衣】

元広島で信越クラブの永井敦士が都市対抗で適時打を放った

 プロ時代には立てなかった東京ドームで、快音を響かせた。社会人野球の頂点を決める第96回都市対抗野球大会は1日、東京ドームで1回戦3試合が行われ、信越野球クラブ(長野市)は大阪ガス(大阪市)に1-4で敗れた。唯一の得点となる適時打を生み出したのが、元広島の永井敦士外野手。高卒4年での戦力外、所属した企業チームは休部……数々の困難を乗り越えて最高峰の舞台にたどり着いた。

 2017年ドラフト4位で二松学舎大付高から広島に入団。鍛錬のときを過ごしていたが、1軍で出場することができないまま2021年限りで戦力外通告を受け、「やっぱり受け止められなかったですね……」と絶望した。

 高校の先輩でもあった鈴木誠也外野手からは、1年目のオフから「そんな考えじゃすぐクビになるぞ」と叱咤激励されていたという。「技術も考え方も、全てが足りなかった。誠也さんにあんなに言ってもらっていたのに、すぐには変われなかったです。クビになって気付いた。遅いんですけどね」。

 すぐにJPアセット証券硬式野球部に所属することが決まり、必死で気持ちを切り替え次の道に進んだ。しかし、昨季限りで休部に。「チーム内で来年もやろうって話していた中での休部でした。時期も時期だったので行けるところがほとんどなくて、いろいろ聞いたけど厳しいと言われて、野球ができなくなるかもと不安でした」と再び絶望。野球ができなくなる危機に、自ら所属先を探し、縁あって信越クラブ入りすることができた。

 現在は長野朝日放送の総務部で月曜から金曜まで働きながら、汗を流す日々。誇らしい都市対抗出場の舞台に立ったこの日は「特別有給休暇です」と笑った。立ちはだかる壁を次々と打ち破り、「野球が好きなので。勝ったときの喜びとか、そういうのが面白いし楽しいんです。応援してくれる人に感動を与えられるので、そういうのを感じてしまったら辞められないですね」。ステージは変わっても、今もなお白球を追う25歳の目は輝いていた。

(町田利衣 / Rie Machida)

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