韓国より日本の方が「レベルが高い」 NPB球団交渉出遅れも…即決した移籍「もう結構」

西武時代のデビッド・マキノン氏【写真:矢口亨】
西武時代のデビッド・マキノン氏【写真:矢口亨】

目標は「MLBに到達することだった」

 大舞台で現実を知り、海外移籍を決断した。2022年にエンゼルスでメジャーデビューし現ドジャースと大谷翔平投手とプレーしたデビッド・マキノン氏は同年オフに西武と契約を結んだ。米球界やKBOでプレーする機会もありながら、来日した背景には様々な要因があった。

 マキノン氏は2022年6月18日(日本時間19日)のマリナーズ戦で、子どもの頃から夢だったメジャーデビューを果たした。「(MLB昇格は)私にとって大きな偉業でした。とても、誇りに思っていることです」。今でも忘れぬ瞬間だった一方、次第に「目標はMLB(で活躍することではなく)到達することだったと気が付きました。MLBではレギュラーになれると思いませんでしたね」。心境に変化があった。

 2017年にエンゼルスから32巡目(全体955番目)で指名。契約金は僅か3000ドル(約44万円)だった。「ドラフト順位に応じてチャンスの数に比例するのが現実です」。少ないチャンスをモノにするしかなかった。当時の目標はMLBにしがみつくこと。「何かやり直すとしたら、もう少しいい順位でドラフトされたかったですね!」と笑いながら振り返った。

元西武のデビッド・マキノン氏【写真:矢口亨】
元西武のデビッド・マキノン氏【写真:矢口亨】

訪れた転機、KBOから“無茶振り”「バッティングを披露してくれ」

 メジャーデビューした同年にアスレチックスに移籍し、その後ノンテンダーとなった。「覚醒しない限り、また昇降格の繰り返しになると思ったんです。キャリアを考えた時、海外でプレーすることを決断しました」。ただ、NPBやKBOは「数年間メジャーでプレーした選手が行く所だと思っていました」。最初は選択肢になく、半ば諦めかけていた。

 ただ、転機はすぐに訪れた。アスレチックスをノンテンダーでFAになった直後にKBOのLGツインズから連絡が来た。「正直言って、(MLBキャンプの)招待付きのマイナー契約をするものだと思っていましたから」。自身にとっても驚きのオファーだった。

 しかし、LGツインズからの要望は打撃を披露すること。「通常は12月から打ち始めるので、11月はバットすら触っていない状態でした。なので、そう言われた時は、『なんてこった!』って、思いましたよ」と、振り返った。

 オファーも格安だった。基本給30万ドル(約4400万円)で出来高も入れると40万ドル台。「海外に行くにしてはかなり低めでした。聞いたことのない額です。彼らはきっと、私が(その年)MLBで稼いだ額を見て、もう少しだけ多くオファーしてみようという感じだったんでしょうね」。足元見られた提案に納得はいかなかった。

西武からのオファーは「あっという間の出来事」

 韓国で打撃を披露した直後、今度は西武が声をかけてきた。「驚くようなオファーが提示されたんです」。あっという間に契約がまとまった。直後にLGツインズが西武以上の金額で再オファーをしてきたというが、断りを入れた。金額だけではなかった。「韓国より日本でプレーしたいという気持ちでした。日本の方がレベルが高いからです」。

 6月にメジャー初出場を果たしたものの、8月にはDFAになり、移籍先でも同年にノンテンダー。激動の1年を経て日本行きが決まった。「日本で引退もありでしたね。まあ結果的にもう引退したんですけどね!」。紆余曲折したが、後悔はなかった。

(増井貴志/Takashi Masui)

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