オリ育成左腕・寿賀弘都が見出した活路 阪神エースの代名詞…捕手も絶賛の“魔球”

2年目の育成左腕・寿賀弘都が自信を深める「真っスラ」
オリックス2年目、育成左腕の寿賀弘都投手が、阪神・村上頌樹投手の武器である「真っスラ」で活路を開いている。「いつファームの試合に呼ばれてもいい状態です」。寿賀がちょっぴり胸を張った。
寿賀は英明高(香川)から2023年育成ドラフト1位でオリックスに入団。中学時代には当時捕手で、ドラフト1位で巨人に入団した浅野翔吾外野手とバッテリーを組み、英明高では3年時に春夏連続で甲子園出場を果たした。
寿賀は最速145キロのストレートに鋭く曲がるスライダー、カーブ、チェンジアップを操る技巧派だが、今季から武器にしているのが「真っスラ」。今春のキャンプで打者の手元でわずかに変化する“クセ球”が首脳陣の目に留まった。打撃練習に登板した際も「打ちにくい」という打者の声が相次いだことで、自信を深めたという。
「真っスラ」は、2023年に最優秀防御率のタイトルに輝き、阪神の18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一に貢献した村上の代名詞。ストレートに近い軌道と速さで打者の手元でわずかにスライドするため、打者を困惑させる球種となっている。
「自分は真っすぐのつもりで、しっかりと(ボールに指を)かけているのですが、ボールが自然に動いているんです。打者にはスライダーに見えるようで、そのギャップで抑えることができています」と寿賀は明かす。村上喬一朗捕手は「サインは真っ直ぐです。でも、スライダーが来るものだと思って構えています。相手打者は『スライダーだ』と言っているのですが、それで結構、空振りが取れるんです。左打者は特に」と話す。
フォーム変更も奏功している。同期の育成2位・大江海透投手(久留米工大、北九州下関フェニックス)の助言で、セットポジションからの投球で足を上げるのをやめた。「足を上げなければブレない、と教わって。走者が出ればクイックで投げるので、それなら最初からクイックにしようと。球速も伸びました」と、新しいフォームに手応えを感じている。
8月31日のウエスタン・リーグ、中日戦(ほっともっと神戸)では1回を17球、被安打0、2奪三振、無失点の好投を見せるなど、2軍戦の登板3試合で計3回を被安打1、失点0と安定した成績を残している。地元・香川で開催された「レクザム フレッシュオールスターゲーム2025」にも抜擢された。残念ながらコンディション不良で出場を辞退し、故郷に錦を飾れなかったが「もう少し、球速を上げて成長した姿を見せたい」と寿賀は前を見据えている。
◯北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)