頓宮裕真が見せた執念「高校でもやったかどうか」 CS目指すチームを鼓舞したプレー

オリックス・頓宮裕真【写真:栗木一考】
オリックス・頓宮裕真【写真:栗木一考】

昨季の絶不調から復活、チームを鼓舞する28歳

 今季、球団タイの10度のサヨナラ勝ちを収めているオリックス。ヒーローになった打者に注目が集まるが、今季からキャプテンを務めている頓宮裕真捕手のヘッドスライディング(ヘッスラ)がサヨナラ勝ちを呼んだ試合もあった。

「体が勝手に動いたという感じです。(ヘッスラは)大学時代にないですし、高校でもやったかどうかわからないです」。頓宮が表情を変えることなく、冷静に振り返った。

 6点差を追いつき、延長12回に廣岡大志内野手の5号ソロで今季9度目のサヨナラ勝ちした、8月17日の西武戦(京セラドーム)での出来事だった。6‐6の延長10回、平良海馬投手から中前打を放った宗佑磨内野手を太田椋内野手が送った1死二塁。頓宮の打球は鋭く、中堅へ抜けるかと思われたが、滝澤夏央二塁手がスライディングキャッチして一塁へジャンピングスロー。頓宮は一塁へヘッドスライディングする執念の走塁をみせたが、間一髪、及ばなかった。

「自然にそういう形が出たというのは、いいことじゃないですか。こっちとしては、けがのリスクがあるのでヘッスラはなるべく止めようと言っているんですが、一生懸命に集中してプレーをすれば、ああいう姿は勝手に出てくると思います。(シーズンの)143試合すべてでその気持ちを忘れずにいれば、優勝に近付く。みんながその気持ちを忘れずにやってほしいという気持ちが、改めて湧きました」と水本勝己ヘッドコーチ。

 一塁ベースコーチャーの安達了一・内野守備走塁コーチも「危ないので(ヘッスラは)嫌なんですけど、(頓宮の)気持ちはチームに伝わったと思います」とたたえた。

 9月13日のソフトバンク戦(同)では0‐0の8回無死一、二塁で初球に意表を突く送りバント。捕手‐三塁‐一塁の併殺に倒れ「僕の判断です」という頓宮を、岸田護監督は「失敗には終わりましたが、勝ちたいという思いでやってくれたと思う」とかばった。齋藤俊雄戦略コーチも「作戦上の指示はしますが、勝ちたいためのアイデアを考えてやるのは選手。バントの後の走塁も含めて中途半端になったところもありますが、自分の立場や望まれているところも理解しながらやってもらえばいい」と責めなかった。

 2023年、首位打者に輝いた頓宮は、昨季は打率.197と打撃不振に苦しみ、秋季キャンプで就任したばかりの岸田護監督に、キャプテン就任を直訴した。就任直後、「この成績でとは思いましたが、自分を奮い立たせる気持ちを込めました。人にやらせる前に、自分がしっかりと動いて先頭に立っていきたい」と明かした頓宮。有言実行で、CS争いを繰りひろげるチームを鼓舞する。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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