横山楓が晴らした曽谷龍平の無念「自責点はつけられない」 ぶっつけ本番で快投の舞台裏

横山楓が負傷降板した曽谷を救う投球「焦ることなくマウンドに」
後輩の悔しさを晴らす投球だった。オリックスの横山楓投手が、折れたバットが左胸に当たり負傷退場した曽谷龍平投手の後を継いだ緊急登板で快投を演じた。
「曽谷に自責点だけはつかないようにと思って投げました。頑張っていてもなかなか勝ちがつかない中で、しっかりと準備をしていたのに悔しい降板になったのですから」。横山楓が無念の降板を強いられた後輩を思いやった。
緊急登板は、9月14日のソフトバンク戦の3回だった。2死一、二塁で海野隆司捕手の折れたバットが曽谷の胸を直撃。担架で運ばれた後の2死満塁のピンチを託された。横山楓は次打者・佐藤直樹外野手を3球三振に仕留めると、3回も無失点。4回は3者連続三振という圧巻の投球で、役目を終えた。
ブルペン内のモニター映像でマウンドの異変を知り、キャッチボールを始めたが捕手に座ってもらうまでの時間的な余裕はなく、マウンドで「自分が納得いくまで」と約15球を投げ込んだ。
ぶっつけ本番で打者に向かったが、緊急登板はウエスタン・リーグでも経験があり今季3度目だった。1度目は4月11日のソフトバンク戦。先発の東晃平投手が3回1死一、二塁で指の違和感により降板したが、2者連続で空振り三振に。2度目は8月1日の阪神戦で、危険球退場の井口和朋投手の後を継ぎ、1死一塁を二ゴロ、一飛で切り抜けた。
「これまでイニング途中の登板はなかったのですが、今季は波留さん(2軍監督)が途中登板の機会をつくってくださったので、焦ることなくマウンドに向かえました」と横山楓。3回に打線が3点を挙げたものの、6回に他の投手が逆転を許したため、勝ち星はつかなかった。
「自分の仕事ができればいいかなと思っています。入山(海斗)も頑張っていましたし」と横山楓。自分のこと以上に、同時期に支配下登録された入山が7回を3者凡退で切り抜けたことを喜ぶ姿勢は、謙虚な横山楓らしい。
厚澤和幸投手コーチは「ポジションでないイニングを投げてもらって、助けてもらいました」と感謝しきりだった。9月20日からのソフトバンク戦4連勝では3試合に登板し、無失点でチームの勝利に貢献した右腕。クライマックスシリーズ(CS)進出を決めた後、コンディション不良で登録を抹消されたが、ポストシーズンでも活躍が期待される。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)